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11話 旅立ち
私たちは、転生し居なくなった彼の座っていた場所を見据える。
何分もの間沈黙が続く。
私は痺れを切らし先に口を開ける。
「ほんとに、お前とゲームしていたせいで予定より彼の転生がかなり遅れてしまったじゃないか」
すると、隣にいる女神は無表情のままこちらに振り向いて言い放つ
「ああ、その設定もういいんで元に戻してください」
そう、これを言われたら私たちの関係は元に戻る。
私は老いた設定を元に戻し、本来の姿に戻る。
「申し訳ございませんアウロラ様。今回はちゃんと成功したということで大丈夫でしょうか?」
隣にいる女神、アウロラ様も本来の女神の姿に戻る。
声質や、容姿、頭の上から足のつま先まで全てが鮮麗されとてつもなく美しい。
アウロラ様曰く、人と会うときはあのくらいの幼さを混ぜレベルを落とさないと話ができる状態になれないという。
「そうですね、最初拒否された時はひやっとしましたが成功と捉えてもいいでしょう」
「やはり、剣崎光希を転生させておいて正解でしたね」
私がそう言うと、アウロラ様はこちらに振り向き目があう。
アウロラ様の瞳には兆を超える色の線で描かれた四角形が無数に刻まれている。
目を合わせるだけで、吸い込まれそうな感覚に陥る。
「えぇ、初めてですよ私たちの仮初めの姿を暴いたものは……」
そう言うとアウロラ様は一変する。
「クフッ……フフフフフフ」
突然笑い出す、あぁこのモードに入るとやばいんだよなぁ。
「もう最高でした!やはり人間というのは面白いです♪」
そう、アウロラ様と私セドナは暇すぎた色んな世界を渡り魂をさばいて来たが同じことの繰り返しで飽きていた。
そこで、見つけたのが彼らがいた地球の人間という種族。
アウロラ様はそれから人間にハマりだし、観察を始めた。
だが、見ているだけだと当然飽きがくる、かと思われたがそれはなかった。
アウロラ様は人間一人々を観察し見定めていた、そう面白い人間を探すために。
観察しているだけでは飽き足らずついにアウロラ様は人間への関与を考える。
だが女神が直接関与することは出来ない、そこで考え付いたのが魂への関与である。
死んでいれば女神でも関与可能、それを思いついたアウロラ様は人間観察にさらにはまっていった。
同じことの繰り返しの作業の中に面白さが生まれる。
アウロラ様はもう一つ同じ人間が住む世界を探し出す。
そう、それが彼らを転生させた世界、それを見つけアウロラ様は2つの世界を使いさらに人間観察を続ける。
2つの世界を使い面白い奴がいればこうやって転生させどんな変化が生じるかそれを見てアウロラ様は楽しむ。
ただ、変化させすぎると世界が終わりかけないのでそこの加減はとても難しいが…
そして、今回あの2人が選ばれた理由。
「あの2人を注意深く見ていて正解でした♪」
さっきの無表情具合からは想像出来ないような屈託の笑顔で話す。
「最初宝くじに当たって2人共親孝行に使うんだから面白くないなぁと思ってたんですが、まさか残りをゲームに課金だなんてしかも全額!大概の人間は貯金だの家だの投資だのと普通のことしかしませんからねぇ♪」
「それじゃあ面白くない♪」
そう、アウロラ様は結局退屈しのぎができればいいだけ……
前に私は人間のどこがそんなに面白いのですか?と率直な疑問をぶつけてみたことがある。
返って来た答えは、醜いから…だった。
人間の欲に逆らえず落ちていく者、その欲を使いうまくやっていく者の差、容姿や体型の差、見方考え方捉え方の差があったりと人間は一人々が全く違う。
たったその程度の差だけで、同種族で殺し合い、蹴落としあう。
そんな種族他に居ないとアウロラ様は言っていた。
そしてだからこそ面白いんだと。
だが、私は……
いや、そんなことどうでもいい私は言われたことを全うするだけ。
「では、観察を続けますかね♪」
そう言うと、アウロラ様は踵を返し奥の部屋に向かう。
それに私も追随する。
最後にぼそっとアウロラ様は呟く
「あと、2人程面白い人がいるんですよ」
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夜が明け、俺は目を覚ます。
シロネはまだ寝ている。
俺はステータス欄を見る、レベル10になって装備やアイテムボックスが使えるようになっている。
なのでステータス画面でアイテムボックスを整理し、装備をする。
すると今着ていた服が少し変化する。
といってもこっちの世界ではステータス画面で装備品をいじっても実際の自分の姿にはあまり関係ないっぽい。装備品分俺自身のステータスが上がっている。
鎧とかどうすんだよって思ってたけどステータスだけに関与するなら問題なさそう。
OOPARTSではレベルごとに装備できるものが変わってくる、なので今は10レベル相応の装備しか出来ないからステータスが上がるといってもたかが知れてる。
そして、女神が言っていたことが一つある。
本来ならレベルが上がると元の世界で上げたようにステータスが上昇する、だがもう一つステータスを上げる方法があると…
それはこっちの世界でもトレーニングすることである、それによりステータスがさらに上昇するらしい。
昨日まで歩き続けなおかつ極限状態だったのでトレーニングによる努力値がもうすでに付与されている。
これは、俺の見解だがこの努力値はこっちの世界での本当の意味での経験値だろう。
モンスター討伐や依頼等をこなせば貰えたOOPARTSオンラインの中での経験値ではなく、実際にこちらの世界で経験し、感じた分だけもらえる経験値とでもいおうか。
まぁOOPARTSオンラインをやっている時はほとんど現実にいる時と変わらないくらいの
再現度であり、ステータスが上昇するとその分自分が身軽になり普段出来ないような動きが
できるようになるが現実に戻るとそんなステータスはあるわけないのでその落差には驚かさ
れていたものだ。
だが今は違う、OOPARTSオンラインのステータスの恩恵を受けたままずっと過ごすことが可能で現実に戻ることもない。
まだレベル100の時との差には慣れていないが、レベルさえあげればその差は縮まるので問題はない。
だから今は、この和衷協同で経験値を稼ぎレベルを上げつつこの世界での経験を積みその分のステータス上昇を狙う、当分の間はこんな感じでいいだろう。
このレベルでの戦闘にも慣れないといけないしね。
しかし今の自分でどの程度のやつを相手にできるかすら分からない以上迂闊に戦闘をするのは危険だからなぁ、そこんところの折り合いも重要になってくる。
「うむゃ……お、おはよう」
そう色々と考え事をしているとシロネが起床する、俺はすぐにステータス画面を閉じる。
「お、おう……おはよう」
いやぁ昨日は深夜テンションで何かと喋れたがいざこうなると何を話せばいいのか分からなくなる。
顔を洗い、今は朝ごはんを食べている。
両者無言である。
気まずい。
先に口を開いたのはシロネだった。
「アキトよわしもお主の旅に同行してもいいか?」
一拍置いて俺は答える。
「問題ないよ、俺から頼みたいくらいだったからね」
もう、スキル<和衷協同>に含まれちゃったからなぁ同行してもらうか逆に自分がするかどっちかしかなかった。
少し調べて分かったことがある、<和衷協同>にはもう一つ機能が付いていて、それは言葉を交わさなくても会話が可能になるというものだ。
恐らく、稼働範囲はあるだろうがこれはかなり便利だった。
シロネにもこのスキルのことは夜に説明済みで快く快諾してくれた。
もし拒否られたらどうしようかと思っていたが杞憂に終わった。
そして当面の目標はレベル上げ…あとお金だ。
俺の中では冒険者でもすればいいんじゃねと安易に思っているんだが果たしてそれで大丈夫なんだろうか……
「これからよろしく」
と、シロネと再度改めて握手をする。
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