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もうあの頃みたいな子どもじゃない
「ねぇ、健太〜、まだ〜?」
私、麻倉なぎは隣の家のドアを開けながら朝から叫んでいた。
「うるっせ〜なぁ。そんな大声で叫ばなくても聞こえてるし、俺だってちゃんと用意してるし。」
そう言って機嫌悪そうに頭を掻きながら西岡健太が出てきた。
健太とは知ってる幼馴染で、マンションの隣の部屋に住んでいる。
今日から高校2年生。もう12年目ぐらいの付き合いになる。
「なぎちゃん、新学期早々遅くなって悪いわね。今日も寝坊しちゃって。こんな子だけど今年もまた1年よろしく頼むわね〜。」
健太のお母さんが申し訳なさそうに出てきた。
「いやあ、もう全然!健太が寝坊するなんてもう慣れっこだから!今年もちゃんと面倒見させて頂きます。」
ちょっとニヤニヤしながら私は頭を下げた。
「なんでお前が上から目線なんだよ〜。別にお前に面倒見られたくないし。」
健太はまだ機嫌悪そうにしながらエレベーターに向かって歩いて行った。
「もう、ちょっと待ってよ!あ、おばさん行ってきまーす!」
私は少し小走りで、2週間ぶりの健太のブレザーの後ろ姿を追いかけた。
健太は昔からやんちゃで、私とはちょっとした事ですぐじゃれ合いの喧嘩になることが多い。昔はそのせいで私を泣かすこともしばしば。
でもちゃんと自分から謝れるし、根はすごくいい子で優しい心を持っている。
スポーツ万能で、今は高校のサッカー部の次期エースストライカー。
高校に入ってからは少しチャラチャラしだして、前にも増してモテるようになった。
「私たち、また今年も同じクラスだろうね〜。」
「当ったり前だろ〜。俺たちの学科1クラスなんだからよ。お前、バカなの?」
健太が見下したようにバカ笑いした。
それと同時に私の頭に優しく拳がコツンと当たった。
「いった!もうやめてよ!!」
私の反応を見てまた笑い出す健太。
手加減出来るようになった辺り、健太も大人になったなぁと心の中で感心してしまった。
「ねぇ、てか急ごう?健太寝坊したせいできっと海斗待ってるよ〜。」
「はいはい、すいませんね〜。」
健太の腕を握って走り始める。
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