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よし、行ってくるか、と夏巳がすでに砂まみれな靴を履いていると、一緒に外に出た桂が、
「夏巳、頑張れよ」
と爽やかに言ってくる。
うーむ。
これで怪しい探偵でさえなかったら……。
いやいや、探偵でなくなったら、この人が此処に居る理由がなくなってしまうのだが、と思いながら、夏巳が赤いハチマキを締めなおしていると、グラウンドの方を見ていた桂が、
「先生って、なんか先生ってわかるよなー。
道や呑み屋で会っても」
と言い出す。
暑い中、ジョウロで水を撒いたりしてくれている先生たちを見ながら夏巳も言った。
「あ、そうですよねー。
なんでだろうな。
先生っぽい雰囲気が出てるからですかね?
あと……、服装?」
休日だと、わからないかもしれないが。
学校帰りの服装だと、書店などで会っても、あ、この人、先生だな、となんとなくわかるときがある。
なんでだろうなと夏巳が考えている間に、桂は体育祭のグラウンドをぐるりと見回し、
「じゃあ、事件探してくる」
と無茶を言って、去っていった。
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