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生徒用のテントに戻ると、また、みんなに桂のことをあれこれ訊かれたのだが。
そういえば、自分もあまり詳しくは知らないな、と夏巳は気がついた。
今は貧乏そうなことを言っているが、なんとなくお坊っちゃまっぽいこととか。
おばあさまがフランス人なせいか、いきなり頰にキスしてきたりするのが困りものなことくらいしか……。
うむ。
伏せておこう、そのことは、と思ったとき、本部テントの裏で騒ぎが起こっているのに気がついた。
……なにかこう嫌な予感がする。
ちょうど出番がなかったので、駆けつけると、やはり桂が居て、みんなが彼を取り囲んでいた。
よく見ると、桂のシャツの肘が汚れ、頰に少し擦り傷が出来ている。
ぎゃあああああっとすごい悲鳴が後ろで上がったと思ったら、バレー部の佐川と祥華だった。
誰か死んだのかという勢いだったが、桂の顔に傷がついたのを見たからのようだった。
「なんてことをっ」
「誰がこんなことっ」
と息ぴったりに、二人が叫ぶ。
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