432人が本棚に入れています
本棚に追加
桂は顎に手をやり、側溝の辺りをウロウロ歩き回り始める。
その顔つきだけ見れば、立派な名探偵のようだ。
「夏巳、これは事件じゃないかな?」
……だから、違うと思います。
「この撒き散らされた書類と鍵束。
この中に犯人にとっては重要なものがあって。
それが人目に触れる前に隠滅しようとしたんじゃないのか?」
「えーと。
突き飛ばされたのって、校長先生じゃなくて、蒲生先生ですよね?」
と夏巳が言うと、桂は足を止め、こちらを見る。
「いや、たぶん、俺を突き飛ばしたように見せかけただけなんだ。
犯人は、たまたま校長の近くに居た俺を突き飛ばし、校長に体当たりさせ、重要書類を始末しようとしたか。
鍵を手に入れようとしたんだ。
つまり、これは――
綿密に練られ、周到に用意された計画的な殺人だったんだっ!」
……校長、死んでません。
最初のコメントを投稿しよう!