それ、事件じゃないんですかっ!?

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   桂は顎に手をやり、側溝の辺りをウロウロ歩き回り始める。  その顔つきだけ見れば、立派な名探偵のようだ。 「夏巳、これは事件じゃないかな?」  ……だから、違うと思います。 「この()き散らされた書類と鍵束。  この中に犯人にとっては重要なものがあって。  それが人目に触れる前に隠滅しようとしたんじゃないのか?」 「えーと。  突き飛ばされたのって、校長先生じゃなくて、蒲生先生ですよね?」 と夏巳が言うと、桂は足を止め、こちらを見る。 「いや、たぶん、俺を突き飛ばしたように見せかけただけなんだ。  犯人は、たまたま校長の近くに居た俺を突き飛ばし、校長に体当たりさせ、重要書類を始末しようとしたか。  鍵を手に入れようとしたんだ。  つまり、これは――  綿密に練られ、周到に用意された計画的な殺人だったんだっ!」  ……校長、死んでません。
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