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まあ、報酬が得られればいいんだから、別に難事件じゃなくてもいいわけだよなー、と夏巳は思っていた。
探偵としては、犬探しや浮気調査では面白くないのだろうが。
しかし、この探偵、かなり困った、顔だけ探偵なのだが。
夏巳の母はいたくお気に入りで。
ファミレスで桂と遭遇して以来、日々、おかずを多く作りすぎては、
「あんた、これ、先生に持って行ってあげなさいっ」
と言ってくるのだ。
そういえば、此処にバイトで雇われているはずなのに、仕事がないので、おかずを運ぶだけしかしていないが、と思っていたところに、この話だ。
バイトとしては付いていくべきだろうか……。
しかし、この駄目探偵、顔だけいいので、二人きりで津和野とか。
緊張してしまって息もできなくなりそうなのだが。
いや、今も二人きりなんだが、然程、緊張してはいないが。
二人で出かけるとか、デートっぽいから、どぎまぎしてしまいそうだ。
そんなことを思いながらも、
「行ってもなにも起こらないと思いますよ」
と夏巳は言ったが、
「いや、事件の片鱗くらい見つけられるかもしれん」
と桂は言う。
……そんな、その辺の川でも漁れば、砂金のひとつくらいあるだろう、みたいな感じの話をされても、と思う夏巳に桂は強く主張してくる。
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