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しかし、どうしたことか。
ちょっと距離感のおかしいこの男は、まだ夏巳のすぐ側に居た。
いや……もうスマホしまったんで、少し離れてください、と思う夏巳を見つめ、桂は言ってくる。
「まあ、今度一度、付き合ってくれよ。
な、夏巳」
だーかーらー、そういうデートみたいな軽い感じで誘わないでくださいよー、
と夏巳は赤くなるまいと思ったのに、赤くなる。
駄目だ……。
この夕暮れの光に茶色く透ける瞳で見つめられると、いやとは言えなくなってしまうではないですか。
そんなことを思いながら、夏巳はジリジリ桂から逃げようとしたのだが、桂はそこで、あっさり夏巳から離れ、窓際に歩いていってしまう。
窓の外、夏巳の学校の方を見ながら、桂は言ってきた。
「そうだ。
じゃあ、土曜はお前の学校の体育祭でも見に行こうかな」
「……やめてください。
大パニックになりそうなので」
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