それ、事件じゃないんですかっ!?

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  「誰、誰っ、あの人っ。  あんたのお兄さんっ?」  体育祭が始まってすぐ、夏巳は上級生女子から詰め寄られていた。  桂が夏巳の家のタープテントに居るからだ。  いや……私のお兄さん、何処から湧いてきましたか、と思いながら、夏巳は、 「あの人は、最近、萩に来られた探偵さんです。  うちのお父さんとちょっと知り合いで」 と父が刑事なことを使い、上手く言い訳をする。  桂に助けられ、なりゆきで事務所でバイトをしているなどともらそうものなら、大変なことになりそうな気がしたからだ。  ついでに桂の助けになればと彼の窮状(きゅうじょう)も少し知らせてみる。  すると、次の瞬間、上級生女子たちは、すぐに夏巳の家のテントに行き、 「探偵さん、事件探してるんですか?」 と訊いていた。  普段は怖い、ガッチリ体型のバレー部のキャプテン、佐川が、その怖さを微塵も感じさせない顔で微笑んでいるのが見えた。  いや、違う意味で怖いんだが……と思っていると、桂が言う。 「ああ、なにかいい事件はないかな」  先生、その訊き方、おかしいです、と思ったとき、佐川が言った。 「先生、うちの犬、逃しますよ」 「なに言ってんですかっ、先輩っ。  うちのサンタを逃すことになってるんですよっ」 と桂にベタ惚れの夏巳の友人、祥華(さちか)がそこに割って入る。
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