後光の彼方

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後光の彼方

その少年は、目前に聳え立つ大樹の枝に縄を結わえ付けて、縊死する事ばかり思い詰めていた。 ( …………………仕方が無い。) その頃のワタクシは姿形などは無く、それ故にヒトの持つ観念と呼ばれているモノを読み解く事は出来るものの、相手に意思を伝える事が出来ぬ故に、ひたすらに見守る事しか出来なかったのだけれども………。 『………アナタには今、このワタクシの声が聞こえておりますか?………ワタクシの声がアナタの心に届いておりますか?』 「…………………………………………!!!」 その時、何故にその少年にはワタクシの声が届いていたのだろうか?………つまりは、その少年にはエゴイズムと言うモノが些か欠けていたのかもシれないのだけれども………。 ワタクシは少年の心に語り始めた。 『………アナタが死を求めている理由が何なのかは分かりません。………ですが、アナタは死を選ぶにはまだ早過ぎます。』 「…………………………………………。」 ワタクシには死を選ぼうとするその少年の持つ概念を理解する為に、その少年に手を差し伸べる覚悟をして、呟き始めた。 『………ワタクシはアナタの家族では無い。お友達になれるかどうかも分からない。………ですが、アナタの神様になら、なれるかも知れません。』 「………………………………!」 『………キミが死を覚悟の上ならば、ワタクシがアナタにワタクシの翼を授けます。………その代わりとして、キミの器をお借り出来ますか?』 「………………wu・tsu・wa ???」 『………キミがまだ知らぬ土地で生き、ソコで暮らす人の喜び、哀しみ、苦しみを知る事で、キミは己の苦しみが如何程のモノであるかを悟る事になるでしょう。』 「………………Yes,………I do.」          ( Where do we go? ) その日以来、その少年とワタクシの現世での物語を探しながら歩む旅が始まろうとしていた………。 刻は、昭和から平成にかけての物語である。 先ずは、その少年の生い立ちを垣間見ようとしながら、ワタクシはその意識を過去の時代へと自らの意識をやつすのであった………。
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