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出逢いはどしゃぶりの雨
「…いらっしゃいませぇ。…新人の、夏姫と言いますぅぅぅ。最近、入ったばかりで経験無いんで、少しは優しくして下さいねぇ?」
そんな社交辞令の様な台詞を言い続けて、どのくらいの日々が続いたのでしょうね?
とにかく、私、今迄に男と女の夜の営みなんて経験が全く無かったものだから、色々と専門用語とか勉強する日が続いてたかなぁ。
先ずは、フェラチオでしょ?…それから、クンニでしょ。後は、バイブとかファックとか…。
でも、凄い事に、初日から3人のお客の相手をする事になってぇ…。何だか意外…。始めのうちは、私の方が辿々しくて、でも、常連客にはその仕草が受けを取れたみたいで、それから、1週間も経たない内に、指名客が四人も付いたのよ。
現実にはどうか知らないけれど、私の世界観の中では、至って順風満帆って感じがして…。
でも、ホントは、祐希とウェディング・ベルを鳴らしたかったのかな…?
…ダメよ。…ダメ、ダメ。
仕事中は、そんな事を考えてちゃ、目の前の方に失礼だし、それでも、お客の中には、必要以上に優しくしてくれる人もいるから、少しは気を紛らわせる事が出来ると言うか何と言うか…。
お客と言うとね…。
そんなお店を訪れる男の人って、日常生活では味わえないモノを求めてやって来るのかも知れないんだろうけど…。
例え、交際相手がいても、独身じゃ無くても、それだけでは味わえないモノがあるのよね?案外、女って言う生き物は、1度交わせば冷める様に出来てるらしいのよ。だから、男が求めても、女に相手にされるとは限らないから、そんなお店が繁盛しちゃうんだろうけど。
そう言えば、こんな人がいたっけ…。
付き合ってる彼女と喧嘩しちゃって、腹いせに強姦しようとしたんだけど、思い留まって、お店の中で、代わりに私を強姦させて欲しいって言い出した男。
むしろ、オスでしょ。何か、…最低って感じ?
でも、給金頂ける訳だし、当初の感覚だと訪れるべき時が訪れたって感じだし、まぁ、それでも良いかなぁ。て気がして、二つ返事で承諾したのは良いんだけど…。
その男、いきなり、私の長い黒髪を掴み上げて、無理矢理にフェラチオを強要する演技を楽しむ訳なのよ。彼って、もしかしたら、売れない芸人タイプかも。自分が売れない理由を、人間社会に責任を擦り付けてたりしてるのかなぁ。
「…オラッ、しっかりしゃぶれよ!…お前、好きなんだろ?…咥えるのがよぉ!」
これって、風俗用語だと言葉責めって言うらしいんでしょ…。でも、何故だかゾクゾクしちゃってたのよね、その時のワタシ。ひょっとして、私ったら、…超ドMだったりして。
やがて、男の両腕が私の太股と太股を開かせた状態で押さえ付け、彼の肉棒で、ワタシのアヌスを「ズブリッ」と串刺しにしたかと思うと、男はひたすらに腰を震い続けるの。
…アァァ、アァァ、アァァァァァ!
これって、本番?…それとも、ファックかな。
演技だとは知りつつも、思わず喘ぎ声を出し続けてしまうワタシ。
でも、これって、コンドームって必要よね?
ワタシ、入店した翌日の出来事だったから、何もかも上手く対応が出来なくて、もしもの時を想像してしまうと、それは御免なさい。なんて事もあり得るから、少し心配になってたんだけど…。
結局、その彼は、ワタシのアソコに挿入させたぺニスを、エクスタシーを感じてしまう手前で抜き出してしまったんだけれど。
只、ワタシのマ○コが潮を吹いてた気がする。
そして、その後の彼の一言。
「…うっかり、中出ししちゃったら、お互いに気まずい雰囲気になると思ったからさ。」
ワタシ、そんな彼に呟いたの。
「そこまでの気配りが出来るのなら、アナタ、自分の彼女の事も大切に出来る筈だよね?…こんな場合、アナタの方から謝った方が良いと思う。」
彼、グッと唇を噛み締めながら頷いてたっけ。
そして、彼を見送る為にお店のエレベーターの前まで付いて行った最中、彼はそっと、ワタシに耳打ちして来たの。
「…今日は凄く気持ち良かったぜ。お前、この業界で生き残るタイプなんじゃねえの?」
「…そうかなぁ?…嘘でも嬉しいかも。」
「嘘じゃ無いって…。じゃあ、これ、お前にやるから取っとけよ。」
そう言って、彼がワタシの手に握らせてくれたのは、壱万円札2枚とコンドーム一箱だった。
そして、別れ際の彼の最後の言葉。
「…今度、店に来る時は、最初から夏姫を指名でも良いか?」
ワタシ、思わず笑顔でコクリと頷いたっけ。
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