第一章 ~転校~

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第一章 ~転校~

  「いつかまた、絶対此処で会おうね、約束だよ!」 「うん、絶対に!」    そんな台詞せりふ、僕にはきっと一生無縁なんだろうな……。僕は自分でパソコンに打ち込んだ文字を見て、心の中でそうつぶやくと、開いていたノートパソコンをため息とともに閉めた。  机の上の置き時計を見ると、日が変わって十分ほど経過したところだった。 「あっ、もうこんな時間か。続きは明日にしよう」  僕は一人でそう言って、眼鏡をはずし、肩にかかるくらいには伸びている髪をかき上げる。  パソコンの横に置いていた冷めきっているコーヒーを飲み干すと、机の引き出しに「ネタ帳」と書かれているノートをしまった。  そう、僕、蒼龍そういん 龍飛りゅうきは小説を書いている。と言うより、それ以外にこれと言って得意なものがないのである。まあ、それも人に自慢できるようなものじゃない。ただただ、自分の書きたいと言う欲を、好きに発散しているだけだ。 「明日、いやだなあ」  僕はベッドに身を預け、すぐ横にある大きな窓の外に広がる夜空を眺めながら、明日……いや、今日の朝の心配を口にした。  と言うのも、僕は確かにこの町の生まれだ。しかし、小学二年の時に引っ越し、それから各地と点々としていたが、今日、再び故郷に帰ってきたのである。  一回目の転校の理由は、別に親の転勤などではない。恥ずかしい話ながら、僕が痛烈なまでのいじめに遭い、それで両親が転校を勧めてくれたのだ。  僕の住む街は、現代の中ではわりと田舎と言える場所だろう。ゆえに進学先もある程度限られており、話に聞くところ、昔僕を毎日のようにいじめ倒していた子も、同じ学校にいるというのだ。  しかし、今更また転校したいとは言えない。なぜなら、一回目以降の度重なる転校は、親の仕事の都合だからである。そして今回も同じ理由であるのだ。  僕も高校生になったし、今まで親に迷惑を散々かけてきたのだ。いつまでも他人に甘えているわけにもいかない。  でもやはり、過去のつらい記憶は、今も胸に深く刺さっていて、学校に行くのが今から辛いのである。  僕は、とにかく寝ようと、布団代わりのタオルケットに身を包んだ。こうして始まった七月一日の夜空は、綺麗な星に彩られていた。
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