煙草

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会社の屋上で妙ちくりんなキーホルダーを拾って以来、私はその女性と話すようになった。 別に昼休みの度に待ち合せたり、どこか一緒に出掛けたりという訳ではない。 ただ、私は昼休み必ず屋上の喫煙所にいる。 何をしに来ているのかその女性は時折屋上に姿を現した。 煙草の煙を空へと飛ばす私に 「あっ、どうも。」 何て言って話しかけてくる。 煙草の煙を気にする素振りも見せないので、私も気にせず何時ものように煙を頭上へ漂わせた。 話したことは大体次会う時には忘れてしまう。 そのくらい取り留めのない話ばかりしていた。 彼女がどこの部署の人なのか、そもそも先輩なのか後輩なのか、はたまた同期なのかすら未だに判然としていない。 ただ、とあるロックバンドが好きであるという事だけは何故かはっきり覚えている。 それくらい彼女の容姿からは想像がつかないことだった。 そして、そんな知り合いと顔見知りの狭間をフラフラと飛ぶような関係が続き、何時しか私は彼女に会えた日には良いことがあったと思うようになった。
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