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(へー、ほんとだ…足速ぇんだな、あの人。周り蹴散らしてる。)
手すりに肘をつきながら、ボーッと流すように見ていた。
「あの前髪くくってる奴は、確かに足速ぇけど…周りの奴、下手くそ過ぎだろ。」
横で音長がぼやいた。
「へた、下手くそ?」
「見てわかんねぇ?足が全然動いちゃいねぇ、全体的に動きも悪い。」
音長は腕を組みながら不満そうに言った。
一目見ただけでよくそんな事を堂々と言えるなーと思った。
まあ1500人もいるとこでバスケしてたんだから凄いやつたくさんいたんだろなー。
「オレ多分、あの人以外だったら50m走勝てる気がする!多分!」
「お前足は速えもんな。」
良介が自信満々で言ったが、50m走勝ったところで何になるのか、俺には理解出来ない。
有都は、コートの様子を静かに見ていた。
「てか、さっさと入部届け出して、練習参加させてもらおうぜ。オレと有都はすぐにレギュラー入り出来るし。」
カバンから入部届を取り出し、さっと書き始めた。
(自分自身にどんだけ自信あんだよ…見た目と性格、そのまんまだなー…)
「俺らだってすぐに入るしー!なあー、秀!」
対抗するように良介は言い、音長と同じように入部届けを取り出し書き始めた。
(まあそれくらいの意気込みがねぇとな。)
2人につられ入部届を書き始めた。
3人の行動に気づいた有都も入部届を取り出し、同じように書き始めた。
全員が書き終えたことを確認し、早速さっきの眼鏡のお兄さんを探しに行った。
下に降りると、すぐに見つかった。
「おー、もう書いてくれたの!やる気満々だね、新入生!」
嬉しそうに笑うお兄さん。
その笑顔も爽やかです。
「何か、運動出来る服とか持って来てる?もしあるなら、今日からでも参加して大丈夫だよ。まあ制服でも構わないけどね。」
お兄さんはニコニコ笑いながら、俺達の入部届を受け取った。
(入学式の日に運動出来る服なんて持って来てる奴いねぇだろ…春休みから来てた奴なら別だけどよ…しゃーねぇから制服で)
「っしゃああー!!よかったー!持って来てて!」
そう言ってガッツポーズをする良介。
「ラッキー、今日から参加出来んの?だから言ったろ有都、一応ジャージ持って来とけって。」
得意気に笑う音長。
「夜美の言う通りにしてて良かった。」
ホッとした様子でカバンからジャージを取り出す有都。
(……え、……ぇぇぇええ!!)
「なんだおめぇら準備良過ぎな!」
思わず叫んだ。
だってそうだろ…こいつら、何で持ってきてんだよ。
教科書持って帰ること考えたらカバンなんてほぼ空っぽでくるだろ普通。
「えっ!持ってきてないのか、秀?俺は秀の事だからてっきり持って来てるのかと思ってたぞ!」
「んなもん準備してねぇよ!てか、持ってくなら俺にも連絡いれてくれよ!」
良介の襟元を掴み、左右に揺らしまくった。
「やーめーろ~ゆーれーる~!」
良介は目をクルクルさせていた。
「お前だけねぇとか…ダッセ…ドンマイでーす。」
音長がニヤニヤしながら嫌味ったらしく言ってきた。
「黙れ、バーカ。」
「…なんか…ごめん…。貸そうか?…僕の…」
有都が申し訳なさそうにジャージを差し出してきた。
「いやいやいやいや、いいよ!」
両手をブンブン振り全力で断った。
それに、お前…俺に貸したらお前のが無くなんだろ。
「持って来なかった俺が悪いワケだし…」
「「そーだそーだー」」
「てめぇらは着替えて先に練習でもしてろ!!」
俺の言葉に一々反応する良介と音長。
かなりイラっとした。
「あっははははは!君たち、仲良いねぇー。」
俺達の様子を見ていたお兄さんが大笑いする。
「ジャージ、僕ので良ければ貸してあげるよ。二着持ってるからさ。おいで?」
「い、いいんですか!?」
お兄さんは優しく微笑んで手招きした。
(俺…この人のいう事は絶対に聞こう!てか、全力でついてく!絶対!)
そんな変な誓いをたて、ジャージを借りにいった。
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