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全員が着替え終わり、俺達はお兄さん…もとい冴木[サエキ]さんの指示に従い、冴木さんが戻るまでサイドで大人しく見学していた。
俺は冴木さんから借りた学校指定の短パンと黒いTシャツを着ていた。
良介は何故かわからないが中学時代の青ジャージに短パンで、かなりガキっぽかった。
音長は、一丁前にオシャレでカッコいい白にラインの入ったダボっと系のTシャツと同じようにラインの入った赤い短パン。
有都は後ろに文字がプリントされた黄緑色のTシャツに黄色のラインが入った白の長ジャージを履いていた。
「おー、みんな着替えたか。それじゃあ、今から名前と顔を確認するから、僕が呼んだら返事してくれよ?」
そういい、冴木さんはボードのような物を取り出し、何か書き出した。
「じゃあ、最初は…高橋良介君。」
「はぁい!俺でーっす!小5からバスケやってまーす!よろしくお願いしやーっす!」「うっひゃー、元気いいなー!よしよし、小5からやってんのかー、楽しみにしてるぞ、うん!」
お互いに声を張り上げながら会話をする二人。
「じゃあ次、音長夜…美?」
「…ういっす。」
「おっ、背高イケメン君じゃあないか!しかしすごい珍しい名前だね!よしよし、よろしく!」
音長はまともに冴木さんの方を見ず、面倒そうに返事をした。
冴木さんは苦笑していた。
(絶対こいつ、ここのバスケ部舐め切ってるなー、こりゃ…態度に出てんぞ…嫌という程…)
横目で音長を見ながら、呆れた表情をした。
「で、次はーっと…瀬名川秀。」
「は、はい!」
「おっ、君かー!何か雰囲気的にバスケって感じだね!よろしくね!」
「う、あ、はい!」
(雰囲気的にバスケ?)
冴木さんのコメントに失笑しそうになったが、そこを何とか堪え、その場を流した。
「じゃあ最後…三性…ありと?」
「あ、すみません。"あると"です。」
「ああ、ごめん、有都か!」
ボードにおそらく読み方だろと思うが、急いで何かを書き終えると冴木さんはふと何かを思い出したような素振りをみせる。
「三性…三性って……なんかそんな名前の俳優さんいなかったっけー…」
うーんと唸る冴木さん。
「それ、多分有都の親「知らないです。」
何かを言い出そうとした音長の言葉を遮り、有都が少し大きめの声を出した。
俺と良介は少し驚く。
「…そう?じゃあ僕の記憶違いかなー。」
「かもしれないです。…といっても、僕はあまりテレビとか観ないので確信はないですけど。」
有都は目線を少し下げ、控えめに発言した。
音長は少し不機嫌そうな様子で、有都を見た後、周りの練習風景へと目線を移していた。
(今、何か有都の様子、おかしくなかったか…?)
少し疑問に思いながらも、その場を流した。
「そうだよね、僕の勘違いかも。まあ、よろしくね!」
「はい、よろしくお願いします。」
有都は礼儀正しく返事をし、軽く会釈した。
「んーと、それじゃあ…今日は何をしようかなー…」
冴木さんはボールペンの後ろの先で頭を書きながら色々と考えている様子。
良介は練習風景をみて、もう練習が待ちきれないといった様子。
例えるならば、待てをされた犬状態だった。
音長はつまらなさそうな表情で練習を見ていた。
有都は辺りを観察していた俺の視線に気付き、頑張ろうといった感じに微笑んだ。
俺はその笑顔に答えるように、ニカっと笑った。
「さーえきー、まだ練習入んねぇの?お前入ってねぇとミニゲーム成立しねぇんだけどー。」
唐突にやってきた声の方へと一斉に視線を向けた。
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