回想

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第2Qまでのスコアは30-75 勝ってたんだ。途中まで…俺たちは。 なのに、あいつが… あの三性とか言う奴が出てきてからは、全然点が決まらなかった。 第4Qの前半で78-75 とうとう逆転された…。 別に油断してたわけじゃない…俺も…チームのみんなも…あいつがコートに入った瞬間に、相手の雰囲気が一気に変わったんだ。 みんな、あいつの気迫に圧倒された。 背丈は170cmくらいで、特別高くはない。 全体的にガッチリした体型というわけでもない…むしろひょろいぐらいだ。 だけど、存在感は凄まじかった。 獲物を狩る鷹のように鋭い目つきに、あざ笑うかのような妖しい笑み。 俺は、今でもあの顔を忘れることが出来ない。 ー85-81で相楽中学の勝利とします。礼。 「「「ありがとうございました!!」」」 中学3年、最後の公式戦…全国を目前にして、惜しくも俺達は敗れた。 「おっつかれ。秀。いやー…惜しかったよな、オレたち。あー、残念だー…」 チームメイトの一人が某然と立ち尽くす俺に声をかけてきた。 「あー残念だって……お前…悔しくねぇのかよ…」 下を向き、唇を噛みしめる。 自然と掌に入る力も強くなる。 「お前ら、残念だー、惜しかったなー、だけで…済ませる気かよ!」 俺の叫び声を聞いた残りのメンバーもこちらを向く。 三性も声に気づき、こちらを見ていた。 「悔しいじゃねえかよ!!途中まで勝ってたんだぞ!!なのに!……なのに…」 目頭が熱くなり、その後の言葉に詰まった。目からは汗か涙かも分からない大粒の滴が次々と流れ出る。 「なのに…負けちまったんだぞ!!この試合、勝ってりゃまだみんなでバスケ出来たんだぞ!悔しくねぇのかよ!負けて悔しいだろ!」 流れ出る滴を吹き飛ばすかのように大声で叫んだ。 俺の言葉を聞いたチームメイトの中にも、手で顔を覆い隠したりする者がいたり、鼻をすする音が聞こえた。 俺は素直に悔しい。 チームメイトだって同じ気持ちなのは分かってる。 けど、試合直後にヘラヘラとしてるのを見て、頭にきたんだ。 敗北を美化する必要性なんてない。 欲しいのは勝利だろ。 試合中は、決して手を抜いた訳じゃないし、みんな全力でやった…だけど……結果的に……負けてしまった。 どうしても認めたくなかった。 頬に流れた幾つもの滴を腕で拭い、三性を見た。 不意に目が合い、これでもかという程睨みつけた。 試合に負けたからといって睨みつけるなんて、周りから見てもそうだが、自分でも、たちの悪い最低な奴だと思う。 三性は少し困ったように眉を顰めた。 「おい!お前…"三性"とか言ったな! …お前、高校行っても絶対バスケやめんなよ!絶対、次は勝ってやるかんな!!」 三性に向かって指差し宣戦布告。 周りの人は唖然として俺を見ていた。 チームメイトも呆然としている。 言った後に、我に返り、若干恥ずかしくなったが言ってしまったものは仕方ない。 中学生なんだ許してくれ。 唐突に指名を食らった三性は目を丸くし、拍子抜けしたような驚いた表情をしていた。 少しして、クスッと笑うと俺と同じような格好でこちらを指差した。 「ああ、待ってるぜ。」 鋭い目を更に細くし、楽しそうに笑った。
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