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「秀、みてみて!」
俺が長考している間、良介は三性の髪で遊んでいたらしく、誇らしげに三つ編みを見せてきた。
「人の髪で何やってんだお前は…」
「………ん。」
三性がピクリと動いた。
「あっ。」
やっちまった、といった顔をしている良介を軽くコツンと叩く。
だがしかし、俺にとっては好都合だ。
三性はゆっくりと身体を起こし欠伸を一つ、それから伸びをした。
「……ん?」
目の前にいる俺と良介を順に見回し、寝惚けた様子で頭をかいた。
「何?ここ、僕の席だけど…」
ぽけ~っとした表情でまだ眠そうだ。
この様子をみて、俺の疑いはどんどん深まっていく。
(本当に、こいつが…あいつ?)
垂れ下がった目尻に人懐っこそうな顔立ち…例えるならば、まったりとした猫。
俺のイメージとは全く違う人物が目の前にいた。
「そりゃ、分かってるよ。オレの席、お前の隣なんだー。高橋良介ってんだ!よろしくな!」
即座に自分だけ自己紹介を済ませ、ハイタッチを催促するかのように手を挙げる。
ごく普通に友達になってやがる。
「あっ、そうなんだ。よろしく。僕は…」
三性も手を挙げ、目の前ではハイタッチが行われた。
穏やかな雰囲気が流れる。
…だが、俺はそれを打ち破った。
机に勢いよく両手をつき、三性を見る。
思ったより大きな音がなってしまい、三性も良介も…そしてクラスの全員がこちらへ注目した。
「お前…ほんとに三性なのか?!あの…相楽中バスケ部エースの!」
良介とクラスメイトはみな、唖然とし、質問をされている当の本人である三性も目を丸くして驚いていた。
「……三性…だけど…一応…相楽中でバスケもしてた…よ?」
三性は困ったように答えた。
「やっぱそうだよな!だから言っただろー、秀。決勝の奴がいるってー。」
嬉しそうに俺の肩を叩く良介。
だが今、そんな良介の動作に反発するほどの余裕はなかった。
頭の中が混乱している…記憶とあまりにも違い過ぎる。
俺が戦った奴は、こんな"三性"じゃない。
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