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色々と話した後、俺と良介、三性、そして三性と同中の金髪野郎、音長夜美[オトナガヤビ]は体育館へと向かった。
"言ってみりゃ、今は"普通"ってとこかな?"
頭の中では、その言葉と共に幾つもの疑問が飛び交っていた。
俺の前を歩いている良介と音長はすっかり意気投合したようで、仲良さそうに話している。
仲良しというよりも、一方的に良介が質問して音長が得意げに答えてるだけのようにも見えたが…俺の横には三性が歩いていた。
こちらは前の二人とは打って変わって物静かな雰囲気。
三性も俺もひたすら無言。
俺は昔から結構人見知りな方で…マンツーマンで初対面の人に自分から話しかけたり、話題を提供するなんてことができない。
(気まずい…)
頭を掻いたり、爪を見たり、辺りをキョロキョロと見回したり、明らかに不審な動きをしていた。
(…何かしゃべった方がいいのか?さっきだって、勢いとはいえ、オレから話しかけちまったわけだし…)
またモヤモヤが始まった。
今まで一緒にいる奴といったら、良介みたいに初対面でも自分からペラペラ話す奴ばっかりだったから、三性みたいな奴はあんまり接したことがない。
(何か…何か話さねぇと…)
この気まずさからどうにか脱出したかった。
肝心の三性はというと、相変わらず涼しい顔をしていて、無言で歩いているのをなんとも思っていないようだった。
(こいつ、案外話さないタイプなのか?)
チラチラと三性の方に視線をやり、ジッと観察するように見ていた。
すると、視線に気づいた三性がこちらを向き、自然と目が合う。
「…僕に何かついてる?」
「…ぃゃあ!…別に!」
(いかんいかん、ボーッとしてた…)
気恥しさを隠すかのごとく、頭をかき、窓の外を見るようにしてそのまま流そうとした。
「僕、君のこと、覚えてたよ。」
「……えっ?」
三性は真っ直ぐ前を向いたまま話し始めた。
「君との試合、君の言葉…全部ちゃんと覚えてたよ。」
「覚えてたって…ほんとかよ…?さっき、あーあの時の~~みたいな顔してたじゃねぇか。」
クスリと笑いながらこちらを見る。
「ごめんごめん。すぐに思い出せなかっただけだよ。…あの試合後のことは今でも鮮明に覚えてる。あれだけ真剣に言われたんだ。忘れられる訳がない…」
あの日のことを懐かしむように、三性は優しく微笑んだ。
「まさか同じ高校になるとは思わなかったよ。」
「ほんとそれ。マジでビビったわ。」
「…公式戦で試合するのは、もう無理かも知れないけど……君達との練習…楽しみにしてるよ。大した取り柄のない僕だけど、よろしくね。」
「お、俺…瀬名川秀!…さっき、名乗り遅れた…から…その…」
勢い任せに名乗ったのはいいが、その後の言葉に困り、行き詰まる。
「三性有都です。よろしくね、瀬名川君。」
三性は一段と優しく微笑んだ。
つられて俺も微笑む。
「おう。よろしく。練習中でも、ミニゲームとかあったら、絶対リベンジしてやるかんな。覚悟しとけ~。」
「ふふっ、こわいなー。」
三性に対する印象が変わるのに、そう時間はかからなかった。
話してみると、結構話しやすい奴で安心した。
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