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再会?
式が終わり、俺たちは各自の教室へと移動した。
教室に入るやいなや辺りを見渡す。
"鋭い目つきでかなり気の強そうな茶髪の男"
昔の記憶を手掛かりにキョロキョロと見回した。
………が、
「あ…れ…?」
俺の思ってるような奴はいない。
「いたー?秀。」
良介も額に手をかざし、遠くを見るような動作をする。
「いねぇ…」
(おかしい…確かに同じクラスだったのに…)
教室後方から順にゆっくりと見回す。
早くも仲良くなってしゃべっている人、席に座ってプリントを整理している人、机に俯している人…色々いた。
「てか、座席表見た方が早ぇし。」
俺たちは教卓に貼られている座席表を見に行った。
|教卓|
ーーーーーーーーーーーーー
| 1 | 8 | 15 | 22 | 56 | 63 |
ーーーーーーーーーーーーー
| 2 | 9 | 16 | 23 | 57 | 64 |
ーーーーーーーーーーーーー
…………………………………
…………………………………
「えーっと、22…22…。右から3列目の一番前…って「ここかよ!」」
良介とハモりながら瞬時に前を向く。
教卓を越えた向こう側には、机に俯した黒髪…というより、上は茶髪で下にいくに連れ徐々に黒になってる男子がいた。
「てか、お前、席隣じゃん!」
「マジかっ!って、一番前のど真ん中なんて最悪だー!!」
頭を抱えて大声で喚く良介。
相変わらずのオーバーリアクション。
…じゃなくて、今はそんなことより先に"三性有都"だ。
教卓の反対側へ回り、三性が座っている席の机の前に立った。
「………。」
お、起こしてもいいものだろうか。
コンコンッと優しく机の上をノックする。
「………………。」
三性からの応答はない。
完全に寝ているようだ。
(どうしよっかな…)
戸惑っていると、さっきまで喚いていた良介も俺の様子をみていたのか真横に来た。
そして、俯している三性とちょうど同じ目線になるようにしゃがんだ。
「爆睡してんじゃねーの?」
「そうなんだよな…ってお前やめろよ。」
首を傾げ、三性の髪を何本か弄りながら良介が言った。
静止を促すがその後も良介は髪を引っ張ったり、くるくる回したりした。
だがピクリとも動かない。
「全然起きねーべな。」
「お前な…」
興味津々で三性を続き回す良介を呆れた様子で見ていた。
出来れば今すぐにでも確かめたかったが……仕方ないか。
しかし……こいつは本当に、あの"三性"なのか…本当にあの。
全ての者を圧倒し、異様な程の存在感を放っていたエースなのだろうか…
今のこいつからは、そんな気迫が全く感じられない。
というより、存在感すらほぼ皆無だ…。
もしかしたら、ただの同姓同名の奴かも知れねぇ…
てか、俺は下の名前すら知らないのだから、ただ単に名字が同じってだけかも知れない。
そう思ったら、無性に恥ずかしい気持ちになった。
単に俺達の思い過ごしだとしたら…
人違いだったとしたら…
ただの馬鹿じゃないか。
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