入部

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入部

「すっげー!体育館広ぇー!!」 「中学ん時とあんま変わんねぇや。な、有都。」 「…うん、そだね。」 「……広っ。」 体育館に着くやいなや大騒ぎする良介。 俺はその広さに圧倒され、立ちすくんでいた。 なんともまあ…広い。 「中学の時と変わらねぇって、よっぽど金持ちの中学だったんだな、お前らの所。」 だってそうだろ…。 二色中の3倍はあるぞ…この体育館。 「まあ、部活が多かったからな。人も多かったしよ。」 音長曰く、1500人はいたかなぁ…、らしい。1学年…500人!ひぇー…… 「すんげぇなー!!」 良介のボルテージとこいつらへの感心は更に上がっていった。 しばらくワイワイと体育館の出入り口で騒いでいた。 「おっ、君たち新入生?」 後ろから男の人の声が聞こえた。 声の方を向くと、そこには背の高い爽やかな眼鏡の男性が立っていた。 「はいっ!そっす!」 良介が元気よく答える。 俺、有都、音長は挨拶し会釈した。 「へ~、4人一緒?バレー?それともバスケ?もしやバト?」 ポンポンと質問を投げかけられ、答える隙が無い。 「俺ら4人ともバスケっす!」 嬉しそうに良介が答える。 「ほ~それは嬉しいね!僕バスケ部なんだよ~。ところで君何センチ?190くらいかな?大きいね!」 良介に笑いかけながら会話をしたあと、次の標的は身長の高い音長へ。 「ひゃ、194cmです…」 「194もあるの!羨ましいー…ボクなんて185しかないからね。」 次々に目まぐるしく表情の変わる人で、見ているこっちが疲れそうだった。 185cmでも十分でかいと思いますがね。 「まあ、俺は背が高いのだけが取り柄ですがね…本命はこっちですよ。」 そういいながら有都を引っ張り、頭をポンポンとたたいた。 有都はまた、?といった表情。 「へぇー、そうなのかい?何かすごいテクニックでもあるのかな?まあ、楽しみにしておこう。ここは危ないから、上のギャラリーでゆっくり見て行くといいよ。もし入部するなら、入部届けを持ってきてくれると、すぐにでも練習参加出来ると思うよ。うち、部員少ないしね。」 そう、忙しなく話すと、ギャラリーへの階段口を指差して教えてくれた。 お礼をいい、早速上に上がって見学する事にした。 「ちぇっ。せっかく有都売り込んでやったのに、軽く流しやがったぜ、あの男。」 上に上がった途端に、音長は不機嫌そうに口を尖らせて言った。 「売り込むって、僕、物じゃないんだけど…」 有都が軽く不満をもらす。 「そんなの分かってるって。今言ったのは、タレントとかを売り込むって言うのと一緒の意味♪悪ぃ悪ぃ…怒んなよ?」 音長は有都の額をコツンと指でつついた。 「別に怒ってないよ。」 有都は優しく微笑んだ。 良介はコートの方を見てギャーギャー騒いでいたが、俺はこの二人の様子を黙って見ていた。 (なんだてめぇらカップルかよ。) と口から出そうになりつつもギュッと紡いだ。 会った時から思っていたが、この二人には何か特別な絆が感じられた。 その絶妙な距離間は何なんだろう。 「秀!見て見て!あの前髪くくってる兄ちゃん!すっげーぜ!!」 良介の一言と、ものすごい肩への衝撃で俺の思考は一気に引き戻された。 力任せにバンバンと肩をたたいて俺を呼ぶ。 本当、加減を覚えてくれ… 「はいはい…どの人?」 はあーっと深いため息をつきながらコートの方へと目をやる。 (俺と良介との絆は、有都達とはちょっと違うよな…仲良いけど、良介のこと今だによくわかんねえし…まあ、わかんねぇなりに意思疎通は図れてるけど…) 良介に目を向けながら、そんな事を考える。 「ほら、あの人!めっちゃ速えだろ!犬みてぇ!」 「犬って…お前…」 (お前ほど犬みてぇな奴はいねぇよ…動きも…性格も……あー、なるほど。俺と良介って…) はは…と呆れ笑いをしながらも、良介が目を輝かせ、指差す方を見た。 「ほら!ほら!みて!」 「分かった分かった。分かったから…」 (俺らって兄弟…下手すりゃ犬と飼い主みてぇだな…)
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