5人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
入部
「すっげー!体育館広ぇー!!」
「中学ん時とあんま変わんねぇや。な、有都。」
「…うん、そだね。」
「……広っ。」
体育館に着くやいなや大騒ぎする良介。
俺はその広さに圧倒され、立ちすくんでいた。
なんともまあ…広い。
「中学の時と変わらねぇって、よっぽど金持ちの中学だったんだな、お前らの所。」
だってそうだろ…。
二色中の3倍はあるぞ…この体育館。
「まあ、部活が多かったからな。人も多かったしよ。」
音長曰く、1500人はいたかなぁ…、らしい。1学年…500人!ひぇー……
「すんげぇなー!!」
良介のボルテージとこいつらへの感心は更に上がっていった。
しばらくワイワイと体育館の出入り口で騒いでいた。
「おっ、君たち新入生?」
後ろから男の人の声が聞こえた。
声の方を向くと、そこには背の高い爽やかな眼鏡の男性が立っていた。
「はいっ!そっす!」
良介が元気よく答える。
俺、有都、音長は挨拶し会釈した。
「へ~、4人一緒?バレー?それともバスケ?もしやバト?」
ポンポンと質問を投げかけられ、答える隙が無い。
「俺ら4人ともバスケっす!」
嬉しそうに良介が答える。
「ほ~それは嬉しいね!僕バスケ部なんだよ~。ところで君何センチ?190くらいかな?大きいね!」
良介に笑いかけながら会話をしたあと、次の標的は身長の高い音長へ。
「ひゃ、194cmです…」
「194もあるの!羨ましいー…ボクなんて185しかないからね。」
次々に目まぐるしく表情の変わる人で、見ているこっちが疲れそうだった。
185cmでも十分でかいと思いますがね。
「まあ、俺は背が高いのだけが取り柄ですがね…本命はこっちですよ。」
そういいながら有都を引っ張り、頭をポンポンとたたいた。
有都はまた、?といった表情。
「へぇー、そうなのかい?何かすごいテクニックでもあるのかな?まあ、楽しみにしておこう。ここは危ないから、上のギャラリーでゆっくり見て行くといいよ。もし入部するなら、入部届けを持ってきてくれると、すぐにでも練習参加出来ると思うよ。うち、部員少ないしね。」
そう、忙しなく話すと、ギャラリーへの階段口を指差して教えてくれた。
お礼をいい、早速上に上がって見学する事にした。
「ちぇっ。せっかく有都売り込んでやったのに、軽く流しやがったぜ、あの男。」
上に上がった途端に、音長は不機嫌そうに口を尖らせて言った。
「売り込むって、僕、物じゃないんだけど…」
有都が軽く不満をもらす。
「そんなの分かってるって。今言ったのは、タレントとかを売り込むって言うのと一緒の意味♪悪ぃ悪ぃ…怒んなよ?」
音長は有都の額をコツンと指でつついた。
「別に怒ってないよ。」
有都は優しく微笑んだ。
良介はコートの方を見てギャーギャー騒いでいたが、俺はこの二人の様子を黙って見ていた。
(なんだてめぇらカップルかよ。)
と口から出そうになりつつもギュッと紡いだ。
会った時から思っていたが、この二人には何か特別な絆が感じられた。
その絶妙な距離間は何なんだろう。
「秀!見て見て!あの前髪くくってる兄ちゃん!すっげーぜ!!」
良介の一言と、ものすごい肩への衝撃で俺の思考は一気に引き戻された。
力任せにバンバンと肩をたたいて俺を呼ぶ。
本当、加減を覚えてくれ…
「はいはい…どの人?」
はあーっと深いため息をつきながらコートの方へと目をやる。
(俺と良介との絆は、有都達とはちょっと違うよな…仲良いけど、良介のこと今だによくわかんねえし…まあ、わかんねぇなりに意思疎通は図れてるけど…)
良介に目を向けながら、そんな事を考える。
「ほら、あの人!めっちゃ速えだろ!犬みてぇ!」
「犬って…お前…」
(お前ほど犬みてぇな奴はいねぇよ…動きも…性格も……あー、なるほど。俺と良介って…)
はは…と呆れ笑いをしながらも、良介が目を輝かせ、指差す方を見た。
「ほら!ほら!みて!」
「分かった分かった。分かったから…」
(俺らって兄弟…下手すりゃ犬と飼い主みてぇだな…)
最初のコメントを投稿しよう!