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送信:もう一度、会いたい。
秋人くんはすんなりと、良いと言った。
ふたたび、同じ居酒屋に入る。先週よりすこしだけ緊張した。新しい夏色のパンプスを選んだせいで、かかとがひり付く。
秋人くんは、相変わらず、季節よりすこし厚い生地の服を着てきた。
「秋人くんと一緒にいたのは、たのしかったよ」
店を出て、お酒が回ると、私は秋人くんと手を繋ぎたくなった。
午後八時の飲み屋街に出来上がる、次のお店を探すかたまり。それをつっつく、エプロン姿のキャッチのすがたが、黒ガラスのように見える。
「じゃあ、なんで別れたんだろうね」
秋人くんは皮肉屋の口調で、駅へと向かう足をたんたんと進めた。
「そりゃ、秋人くんが私を優先してくれないのが、いやだったからだよ」
「じゃあ、逆に、俺のどこが好きだったのよ」
さみしいから。
他人に執着しない秋人くんのこと、うらやましくて。
近づきたいと思った。
口に出せないその理由が、喉元で呪いのように貼りつく。たまらず、私は秋人くんと手をつなごうと思った。
「俺の不満、それだけじゃなかったでしょ」
秋人くんは、伸びてきた私の手をするりとかわした。
私は悔しくなって、なんども粘って、強引に両手を使いつつ、彼と手を繋いだ。
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