雨の日は君と1

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雨の日は君と1

 あれから数日経った。桐生は当たり前のように、クラスに溶け込んだ。俺はというと、もちろんボッチだ。あのあと、二人で互いの家の近くまで行くと、自然に、じゃあなと言って別れた。あの日から、俺と桐生は喋ってない。別に、寂しい訳ではない。ただ、桐生はひたすら色んな人に引っ張りだこだった。だから、俺といては桐生の取り巻きも困るだろうし、俺が独占できるような友達でもないため、ひたすら桐生とは喋らない日が続いていた。  ただ、最近悩みがある。どうも最近、桐生のほうからじっと見つめられている気がするのだ。別に自意識過剰とかではなく、俺が桐生を振り返ると、あいつはこっちを見ていて、あまつさえ手を振ったり、笑ったりしてくる。もちろん、それに取り巻きはいい顔をしないが。むしろ、俺の方こそ、最近のそんな桐生に困っているのだ。なまじ整った顔をしているのと、普段からボッチなのが悪いのか、無駄に顔の良いあいつが眩しくて仕方がない。  そんな毎日を送っていたある日、突然昼から雨が降りだした。しかも、夕方になる頃にはもうどしゃ降りだった。雷も遠くだが、微かに鳴っている。  たまらず教師たちが取った策は、生徒を早く帰すことだった。突然のハプニングに教室はお祭り騒ぎ。女子はキャーキャー騒ぎ、男子はこの雨のなか、傘をささずに帰ろうとする馬鹿さえいた。そのときは、思わずこの学校の学力レベルを疑ってしまった。  まあでも、俺も傘を忘れていることには違いなく……ずぶ濡れで帰るしか無さそうだと思った。正直、濡れた制服は臭いし、濡れると寒い。しかし、覚悟を決めたその時、「あの日」と同じようなことが起きた。 「相沢ー!!」
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