雨の日は君と2

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雨の日は君と2

 「桐生!?」  そう、あの日と同じように桐生に呼び止められたのだ。しかし、前回より派手に濡れている。さすがの俺も、これには疑問をぶつけた。 「お前、どうしてそんなに濡れてんだ!それに…傘があるなら早くさして帰ればいいだろう!」  しかし、そんな俺の問いに更なる衝撃を桐生は与えてきたのだった。 「そんなの、お前と帰るためだろ?」 「は…?」  思わず持っていた鞄を落としてしまうほどには、驚いた。あぁ、中の物も濡れてしまっただろうか。場違いにそんなことを思いながら、桐生の言葉に耳を傾ける。 「俺さ、お前といるの好きだけど、さすがに馬鹿じゃねぇから、他のやつがいるところにお前を連れていくのは、お前が嫌がると思ったんだ。まあ、こんなの思い込みかもしれねぇけど。だから俺…あの日から考えてたんだよ。どうやって、お前と一緒にいようかなって」  そんなの、初耳だ。桐生が良いやつなのはあの雨の日の、あの一瞬しか一緒にいなかった俺でも分かる。 「だから俺っ、雨が降ったときだけ相沢と帰ろうって決めたんだ。っいや、も、もちろんっ普通にいつも一緒にいれるなら、もっとうれしいけど!!けど…お前が傘を持ってんなら、それにあやかって帰る。持ってねぇなら、俺が家まで取りに帰って一緒に帰る。そういうのも、ありかなーって……まあ、傘が一個ってのは、これの方が楽しそうだろ?」  ちょっとイタズラっぽく笑うその仕草に、思わずドキッとしたのは秘密で。そのあと、こいつは本当に馬鹿なんじゃないかと思った。  家まで取りに帰る?  傘が一個の方が楽しそうだろ?  桐生、お前は本当に大馬鹿者だ!  なんで、俺みたいなボッチと仲良くなりたいが為にそこまでする?  なんだか、それって…お前に好きって言われてるみたいじゃないか。
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