その日は雨だった

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その日は雨だった

 高校生活1日目、その日は雨だった。入学式を終え、地元から1人、都会に出てきた俺には友達もおらず、また、友達を作れるほどのコミュ力もなかった。正直、やっていける気が全くしなかった。バッチリメイクをした女子に、制服を着崩した男子。ここは、そこそこ頭が良いと聞いていたから進学したのに、ちょっと、いやかなり、残念だった。向こうも思ったんだろう。俺みたいな田舎から出てきたやつが、こんな都会でやっていけるわけないって。自己紹介で前に立ったとき、クスクスと聞こえた。俺を笑っているんだって、すぐわかった。  けど、俺はここに来た。なら、やるしかない。ボッチだってしょうがない。ここでいい成績とって、帰んなきゃいけないんだ。  そんなことを考えながら、ひたすらボーッと、下駄箱でしとしとと降る雨粒を見ていた。そう、傘を忘れたのだ。もうこれは、運が悪すぎて笑えてくるレベルだ。1人笑っている姿は、余程気味悪く見えたのだろう。誰も俺に近づかずに帰っていく。あるものは、友達と走ってずぶ濡れで。あるものは、恋人と相合い傘で。  …なんだろう。酷く虚しい。皆、誰かと一緒に帰っていくのに、俺だけ1人。…寂しいじゃないか。  結局、濡れて帰ることを決意し、一歩を踏み出した。のだが、 「相沢ー!!」 一歩は踏み出せなかった。1人の男に呼び止められたからだ。振り返れば、そこにいたのは、雨に濡れ、湿った金髪が何とも言えない雰囲気を醸し出させる、クラス1のイケメン(恐らく)だった。
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