プロローグ

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プロローグ

『※※※※さん、貴方は死にました。以前の名前は理解できないでしょうからしなくていいです。貴方には異世界に行っていただきます。地球とは違う世界です。そのために必要な知識と、能力を授けましょう……。それでは、異世界の召喚者が待っているので、転移させます』 と、そんな言葉が聞こえた。 ――――― 「じいじ!うまくいった?」 「おお、完璧じゃよユキちゃんの魔法は」 「えへへ~」  そこには爺さんと幼女がいる。傍から見たら色々と不味い絵柄だ。どう不味いか。爺の表情がとろけすぎている。まるで変質者。 「うむ。もう暫くのようじゃな」 「どんなひとがでてくるんだろうね!わくわくだね!」 「そうじゃの!」  楽しそうに会話をしている。だが、爺さんの顔はだらしない。傍から見たら不審者と幼女。これが似合う言葉だろう。 「おっ、床が発光してきおった」 「わぁ~!きれ~!」 「しかし、此処にユキちゃんの婿殿が来るのか……(変なやつじゃったら即刻死刑じゃな)」 「じいじ!め!だよ!かんたんにひとをころしちゃ、め!なんだよ!」 「儂はそんな事しないぞ?」 「うそ!じいじ、いまいってた!」 「(我が孫ながら大した聴覚じゃ)そんな事はないぞ?」 「あー、いまもなにかいった!」 「い、いや、何も言っておらんぞ?それより、召喚が始まるぞ!しっかり見ておきなさい」 「うん!わかった!」  そう言うと、幼女は真剣に魔法陣を見つめる。  そして、爺は真剣に魔法陣を見つめる幼女を見つめる。  発光現象が次第に増大していく。部屋の中が真っ白になり、何も見えなくなる。そして……。 ――――― 「痛っ、何だ?ここは?は?何それ?死んだってどういうことだよ!てか答えろよ!おい!何とか言えよ!は?知識と能力?……中二病かよ……って、は?……グッ、ガハッ!ガァアアアアアアア!痛い痛い痛い痛い!何だこれは!巫山戯るな!頭が割れる!体全身が痛い!一体どうなってんだよ!は?この状態で転移するのか?おいおい、巫山戯るな!ちょっとま」 ――――― 「てっつーの!あれ?痛みがない?此処はどこだ?異世界なのか?」 「おお!成功じゃ!」 「やったー!!!」 「よくやったのぉ、ユキちゃんや~」 「うん!わたしがんばった!」 「で、一応適当だったが説明は聞いた。そして、この世界のことも理解はしている。で、だ。あんたら誰だ?そこの幼女は良いとしても、爺あんた変質者かなにかか?通報するぞ?」 「馬鹿を言え!儂のどこが変質者だというのじゃ!」 「顔だよ顔!爺がロリコンなのは良く分かった。だがな世の中には法律……という……ものが……無い!あれ?この世界、法律でそういうの無いの!え?此の国だけじゃなく他の国も?は?一体どうなってんだよぉ!?」 「所で此奴は、先程から何を騒いでおるのかのぉ?」 「おにーちゃん!かっこいい!わたし、おにーちゃんならいいよ!」 「これ、ユキちゃん、早まるでない。まずは儂がじっくり見定めてからじゃ」 「えー、そんなこといってころしちゃうとかはだめだよ?」  上目遣いで幼女に覗かれる爺。「ぐはっ」っと言って鼻血を垂らす爺。やっぱロリコンだ。おまわりさん呼ばなきゃ。あっ、この世界におまわりさん居ないんだった……。 「で、殺すだの何だのって話が出てるけど、俺を殺すつもりか?言っておくけど、能力の使い方、魔法の使い方、戦闘のやり方は頭に入ってるぞ?爺一人で勝てるのか?」 「確かに、無理じゃの。心配するでない。世の中には物量という言葉があってだな」 「その衛兵を呼ぶ前にあんたを仕留めれば誰が呼ぶんだ?」 「お主、そんなことをすれば、お尋ね者じゃぞ?」 「顔見られないようにテレポートすればいいじゃないか」 「此処で使える魔法は一つだけじゃ。そのための部屋じゃから、そこの出口をでないと魔法はまともに使えぬ。となると衛兵の前に出ていかねばならぬの?因みに、此の部屋の効果は絶大でな。遠くへ行かねば魔法はろくに使えんぞ?」 「……その話が本当だったらな」 「ほんとーだよ!おにーちゃん!」 「……所で、そこの幼女は一体何だ?」 「ようじょ?わたしのこと?わたしはねー、ユキってなまえなの!ほんとうはもっとながいなまえなんだけど……パパとじいじにいっちゃだめっていわれてるから、いえないの……」  しょんぼりする幼女。それを見て喜ぶ爺。本当に鬱陶しい。 「ユキちゃん、って言うのか?とりあえず、そっちのお爺ちゃんに近づいていると危ないよ?こっちにおいで?」 「じいじはあぶなくないよ!だいじょーぶ!でも、おにーちゃんとおはなししたいからそっちにいくね~」  そう言ってこっちに駆け出す幼女。それを情けない顔→(;´Д`)で見ている爺。コイツラの関係が本当に分からん。 「おにーちゃん!おなまえは?」 「俺か?俺の名前は……名前は……あれ?名前が……記憶喪失?いや、前世のことを忘れてるのか?いや、地球の記憶はある。でもパーソナルデータが無い……どういうことだ?地球で常識だったことは覚えてる。どういう政治家が居て、どういう芸能人が居て、どういう世界だったかも……なのに俺のことが全く思い出せない」 「あー、じいじのいってたことほんとうだったね」 「じゃから言っておるじゃろ?ユキちゃんのつける名前が重要なんじゃと。考えておったのか?」 「んーん、かんがえてない!だって、あってみないとわからないから!……それで、おにーちゃんはどんななまえがいい?」 「は?いや、待てどういうことだよ?」 「いや、何。過去にも何度か召喚された人間がおってな。そのものたちは皆自分の名前を失ってこの世界にやってくるらしいのじゃ」 「……」 「だからね!わたしがおにーちゃんのなまえをつけたげる!……うーんとね、えーっと……そうだ!ユアンってなまえはどお?」 「……ユアン」 「だめ?」  確かに、あの爺が鼻の下を伸ばすのが分かる気がする。この子の上目遣いは破壊力抜群だ。 「いや、それで良いよ」 「やったぁ!それじゃ、おにーちゃんのなまえはユアン!ユアンおにーちゃん!」 「あ、ああ。分かった」 「えへへ~、ユアンおにーちゃん!」 「どうした?」 「ん~ん、なんでもない♪」  そして、向こう側に居る爺は顔だけで呪い殺せるのではないかという表情をしている。 「ええい!やはり駄目じゃ!お主のような不埒な者に任せるわけにはいかん!」 「いや、爺に不埒とか言われたくねぇよ。俺が不埒なら爺は卑猥だろ。少しは自分の顔を考えろ。あっ、まともな鏡はこの世界に無いのか……でも魔法があるな。後で自分の顔をよーく見とくんだぞ?それが不審者で変態、卑猥な顔だ」 「お主、誰にものを言っているのかわかっておるのか!」 「いや、知らねぇよ」 「儂はな……」 「じいじ!め!それいっちゃ!め!」  幼女が割り込んでくる。 「何か決まりごとでもあるのか?」 「うん!それでね、ユアンおにーちゃん、おはなしがあるんだけどきいてくれる?」 「ああ、ユキちゃん!それを言ってはいかん!」 「ユアンおにーちゃん、わたしとけっこんしてください!」
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