マコちゃんとチィとボク

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「あーもう!」 イライラして、大きい声を出して。それからベッドに片膝を突いて、女の人を引き寄せる。タイプじゃないけど、煙草も貰ってしまったし、後腐れなく出て行きたい。 最後にギューッてハグして、胸におっぱいが当たって、女の人からしかしない匂いがして。向こうが手を回して来る前に、チュッとキスして、離す。女の人はすとんとベッドに座り込んだ。 「はい、これでおしまい!」 言い聞かせるように言ったら、あとは見向きもせずに玄関の方へ向かう。踵の潰れた、履き古したスニーカーを突っ掛けて、ドアを開ける。その拍子に振り向くと、女の人はベッドの上で、ぽかんとしてこちらを見ていた。たまに縋り付いてくる人も居るので、そういうパターンじゃなくて良かったと思った。 バイバイと手を振って、笑顔で家を出た。 眩しい朝日に顔を顰めながら、何となくエレベーターのありそうな方へ歩き出す。欠伸が出た。 ここが何階なのかも分からないけれど、廊下から見える景色を見るに、そんなに高層階ではなさそうだ。 エントランスを出て、左右を見回した。知らない街の匂いがした。見覚えの無い場所だった。 昼と夜では風景の印象というものは違って見えるし、ここまではタクシーで来たのかも知れない。どっちに行けば、何という名前の駅に着くのか。それすらも分からない。でも感覚的に、歩き出す。 そうしながらポケットからスマホを出して、現在地を検索する。充電の残りは16%だ。 出てきたのは、聞き覚えのある程度の地名だった。想像していたより、閑散としている。その名の付いた駅で降りた事はないけど、今はそこから電車に乗るしかない。
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