マコちゃんとチィとボク

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後片付けを終えて、玄関で一度煙草を吸って戻ると、マコちゃんはさっぱりとした様子でベッドに入っていた。サイドテーブルのキャンドルは片付けられていたけど、代わりにオレンジのランプが点いているから、眠っていないのが分かる。淡い黒色のタオルケットが、背の高いマコちゃんの体に沿って波を描いている。 窓を開けて換気をした部屋に少しだけ残った、アロマキャンドルの香りを胸いっぱいに吸い込む。 それからベッドに座った。マコちゃんの髪は、ブリーチで脱色して傷め付けたのとは真逆の、綺麗な黒色。指通りの良い短い髪を梳くと、白の枕カバーにさらさらと流れていくみたいだった。 そうしていると、マコちゃんが目を開けて、ちょっと端の方へ詰めてスペースを作って、タオルケットを持ち上げて見せる。 「ほら。」 さっきまで同じベッドの上で滅茶苦茶になっていたのとはまるで別人みたいに、落ち着いた声と、クールな仕草。優しくて、カッコいいマコちゃん。こんな風にされたら、ほとんどの人はその隣に喜んで滑り込んでいくんだと思う。 勿論ちょっと狭いのを我慢して、隣で寝ても良いんだけど。 「いや、向こうで寝るよ。」 そう断ると、マコちゃんは頷いてゆっくりと腕を下ろした。またしばらく前髪を梳いたり、頬や首も触ったりして、その指をマコちゃんの鼻に持っていくと、ちょっと顔を近付けて、すんすんと嗅がれる。ぴよんと生えた細長いヒゲが無いから、擽ったくはない。 「チィもよくやるよね、それ。」 そう言って笑うと、上目遣いになったマコちゃんは少し恥ずかしそうに肩を竦めた。煙草を吸わないのに、指に付いたニオイは平気なのかなぁなんて思いながら、されるがままのマコちゃんを気が済むまで堪能して、ようやく立ち上がる。
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