マコちゃんとチィとボク

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大抵は遅めの時間でもやっている見映え重視のランチを食べて、何も買わないショッピングに付き合って、ああでもないとかこうでもないとか何でも似合うねとか言われながら服を選んだり、女の人が喜びそうな恋愛映画を見たり、欠伸をしながら美術館や展望台に行ったり、カフェで甘い物を食べたり写真を撮ったりして、その後はホテルか、相手の家に向かう。 デートする気分じゃない日は、よく行くクラブやバーに行って、常連客や仲間と音楽を聴いて、ショットやダーツ、ビリヤードなんかをして騒いで夜を明かしたり、そこで初めて会った女の人と仲良くなったりする。そしてまた、違う場所で朝を迎える。 マコちゃんが家に居ても居なくても、そんな毎日の過ごし方はほとんど変わらないのに。 「朝ごはん、どうする?」 「いらない。多分、昼まで寝ちゃう。」 マコちゃんはきっと、朝ごはんに何が食べたいかを訊きたかったんだと思う。今の内に確認しておけば、作ってから出掛けられるから。でも、冷たい朝食はなるべく食べたくなかった。 「そう…分かった。それじゃあね。」 そう言って、マコちゃんがオレンジのランプを消そうと手を伸ばす。その前に腕を伸ばして、廊下の照明のスイッチを押した。 暗くなった部屋から出て、もう一度マコちゃんの方を振り向く。ベッドに潜り込む大きな影に向かって声を掛けた。 「じゃあ、おやすみ。」 「おやすみなさい。」 ドアが閉まる直前に聞こえたのは、いつもの低くて優しい声だった。
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