マコちゃんとチィとボク

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そんないつものやりとりの後、シャワーを浴びていたら、マコちゃんや、チィや、今朝まで一緒に居た女の人のことが頭を埋め尽くしてきた。 毎晩のように遊びに行って、飲み歩いて、知らない女の人と寝て、起きたらゾンビみたいになって、マコちゃんの居るこの家に帰ってくる。 マコちゃんはそうするのがまるで当たり前みたいな顔をして出迎えてくれる。 一緒にゲームをするために初めて遊びに来て、災害級の豪雨で電車が止まって帰れなくなった時も、ストーカーまがいの元カノに包丁で刺されそうになって、隠れる場所を探していた時も、大学を辞めて、親と喧嘩をして家を飛び出した時も、何も聞かずに泊まりたいだけ泊まらせてくれて。いつの間にか、自分の家として暮らすようになってしまっていた。 向こうから深い事情を聞いて来る事はないけど、こっちが何か話したくなったら、マコちゃんは何時間でも聞いてくれる。ソファーに座って、いつの間にか温かい飲み物なんか用意してくれて、うん、うん、と落ち着いた声で相槌を打ちながら。 いつもとにかく冷静で、あんまり大きな声で笑ったり怒ったり泣いたりしないマコちゃんは、カッコイイ。さっき休憩していた公園で、ボロボロのチィを拾った時も、半泣きで飛び込んできた様子を見るなり、上着を羽織って車を飛ばして、動物病院に連れて行ってくれた。颯爽と、という言葉がぴったりだった。 そう言えば、チィを病院に連れて行って、体の具合が生まれつきあまりよくない事や、長生きできないかも知れないと伝えられても、マコちゃんは顔色一つ変えなかった。飼いたいならウチで飼ってもいいのよ、って言ってくれたから、チィはこの家の子になった。
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