奪うものと奪われたもの

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奪うものと奪われたもの

「ごーじゅーう!」 「あー地味にきついわー」 「俺さあ声楽部なのにジャージ持ってこいなんて訳わかんなかった」  新入部員の雪野が肩で息をする。 「まー声出すには腹筋も必要だしさ、基礎運動もあるし文化部だけど部活は 基本ジャージだぜ」 細めの髪がさらさら揺れる若宮咲(さく)がにっかりと笑う。 「それより雪野ってさあ、塾やってなかったけ?部活との両立ってキツクね?」 「んー。今はまだ一年でコマ数少ないし、部員にテノール少ないし、 都と付き合うの条件だし」 「は?マジ?部長と付き合うために入部した訳?」 「都も別に嫌がってなかったし、今はフツーにフツーな高校生らしい お付き合い。なーんて、うふ」  軽くクセのある明るい髪の雪野が笑顔で返す。 「うわー!すげ。御手洗先輩から奪っちゃったんだ」 「え?御手洗副部長?あの人は声楽部の副部長だよ。たとえ都の事が好き でも、何も行動に移さず関係壊さないように三年間真面目に副部長でしょ? 純愛ー。とか言っても根性なさすぎ。だから俺みたいなのに持っていかれ ちゃう訳」 「いやーん。その自信どこから~」 『あーあ。意気地なし』  若宮はちょっとムッと胸に感じていた。 「さあ、みんな!課題曲いくよ!」都の声が響く。
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