「毒舌声姫」

1/1
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/23

「毒舌声姫」

慌てて御手洗が振り返ると、若宮が窓に寄りかかっていた。 「なんだ。若宮か、閉めるから早く帰れ」 「ふーん。で自分はすっかり暗譜してる曲を誰のために弾いてるのさ。 部長のため?自分のため?これ、全然合唱曲じゃないじゃん」 「ただの自己満足?感傷にひたりたいの?」  咲が強気に突っかかる。 「何なんだお前、三年生に向かって」 「だって女々しいんだもーん。部長と雪野の事なんてみんな知ってるし、 俺、耳いいから誰かさんが時々「愛の夢」弾いているの知ってる。 でも暗譜とはねー。弾きこんだねー。いつか聴かせかった? でも今ならショパンの「別れの曲」とかが合ってるんじゃない?」 下級生だが若宮は常に上から目線で話す。 若宮の態度にイライラしつつも、 「お前、割とピアノ曲に明るいな」 「だってソプラニスタだもん」 「それは声質だから関係ない」 「ほら、閉めるぞ」 何も弾かず御手洗はピアノの蓋を閉じる。 『ふん。意気地なし』
/23

最初のコメントを投稿しよう!