副部長のプライド

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副部長のプライド

「あれー?今日は弾くんだ?」  ひょっこりと若宮が顔を出す。 「お前は帰れ」  御手洗は少しうんざり気味だ。 「どうせならハンガリー狂詩曲とかやればいいのに」 「あれは練習曲だろ。コンクール前に腱鞘炎にさせる気か」 若宮は右側の高音の鍵盤側の椅子のスペースにちょこんと座る。 「おい、邪魔」 「邪魔じゃないさばき方するくせに」  ははっと若宮が笑う。 「お前は本当に生意気だな」 御手洗が静かに鍵盤に指を置く。  若宮は少しペースを遅らせている曲に耳を傾けている。 『うわー。こんなに優しく弾いちゃってさ御手洗さんて乙女チックー。 もっと激しい愛の曲もあるのにさー』 弾き終わって鍵盤から指を離し、小さくため息をつく御手洗。 「吹っ切れてないんだー?三年間も一緒にいて」 「うるさい!そんな簡単なものじゃないんだ」 「三年になったばかりの俺たちは新入部員の確保に走り回っていた。 お前も含めて何人か入部したが、 あの頃の藤本はプレッシャーで倒れそうだったんだ」
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