1人が本棚に入れています
本棚に追加
***
----明後日、部活の見学いけそうだよ。大丈夫かな。
そう、みもりから届いたのは、美澪が寝ようかどうしようかと考えて、だらだらと読書やスマホを見ていた時だ。すぐに、返信して、美澪は、うれしくてベッドに突っ伏して、枕に顔をうずめた。いうなれば、あの公園の光景から、不思議な力を使っていた、憧れ続けた人が、来てくれる。理由はそれだからだ。
みもりからは、昔から空手に近い格闘術をやっていたと、会話などで、聞いていた。剣道と空手は全然違うものだけれど、あの公園での動きからすれば、剣道の動きをすぐモノにしてくれるかもしれない。
彼女が入れば、もっと強くなれそうだ。
もし、彼女が入らないことを選択しても、美澪は拒まない。彼女とお話しできただけ、いや、見学のお誘いができただけでも自分の中では上出来だった。
――――あわよくば、みもりさんと……。
枕から、顔を上げて、体を反転し上体を起こす。
体中に、熱いものが流れる感じ。すると、脳裏に、木刀を構える自分自身に相対し、空手の型を構えるみもりの姿があった。ダッシュで近づき、木刀を振り下ろす美澪に対し、それをそつなく受け流すみもり。
切り下げ、打撃。後退。蹴撃。回避。投げ。最後に、ぶつかり合う拳と木刀。
って、なんで、こんなこと想像してたんだろう。なんか、彼女のことを知ってから、どんどん、戦いたくなってくる。おかしいな。意欲が止まらない。ただ、仲良くなりたいだけなのに。喧嘩なんてしたくないはずなのに。想像すれば、攻撃し合う光景。
お互いにもてる力をぶつかり合って、どちらかが倒れるまで応酬し合う。
でも、喧嘩とは違う気がするとしたら……。
お互いに、かすかに笑いあっていた。楽しげに。こんな、暴力的な光景であるはずなのに、まるで、一つのスポーツのようにお互いに尊敬しあい、たたえ合う感じ。
いや、そもそも、剣道だって、別に嫌いあって、試合をしているわけではない。試合が終わった後は、お互いをたたえ合うべきなのだ。空手にも組手があるというが、それも同じであるはず。
「もう、寝よう。たぶん、眠いんだ。寝た方がいい」
と、美澪は部屋の電気をけし、床についた。
最初のコメントを投稿しよう!