水溜まりが広がりそうな空模様にて・③

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水溜まりが広がりそうな空模様にて・③

 美澪は、自宅の縁側にて正座し、瞼を閉じる。いつもの朝の日課。登校前に、日課として行っている。傍らには木刀。いつもは、竹刀を持つ彼女だが、自宅で素振りをする際は木刀を使っている。  曰く、一番手になじむから。  常日頃、朝早く起床し、自分が納得いくまで素振りをする。その後に瞑想をしてから、朝食や身支度をおこなうのが、彼女のルーティンである。するとしないとでは、一日のコンディションが大きく違うと感じていた。  邪念を払う。自分を空っぽにする。ざわつきそうな心を静める。そして、体の中心に一本のエネルギーの流れをイメージする。それを全身にめぐらせる。そこから、一つの刃を作るイメージ。集中。    一瞬、美澪めがけて、空気のカタマリが全身を打ち付ける。    いうなればそれは、一陣の風。精神が一番研ぎ澄まされたときに決まって、風が吹くのである。   「うん。今日、やってみよう」  美澪は、決心した表情になった。その瞳はまっすぐ遠くを見つめていたようだった。
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