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夢を見ていた。朝の強い日差しが僕の目に飛び込んできた。
母が食器を洗う音。ベッドから起きて廊下に出る。父の部屋から香るタバコの匂い。これはおそらくセブン○ターだろうか、まぁどうだっていい。
リビングに入ると僕が起きるのを待っていたのだろうか、妹が突然抱きついてきた。にっこりと笑い僕をソファに押し倒してこう言った。
「お兄ちゃん、ヌキヌキしよ〜」
「ファ!?」
僕は驚いたんだ、しかしよくよく考えてみると机の上にポッキーがあった。
普通に考えればポッキーのチョコレートを溶かすことだろう。
「福ちゃん、もう何時だと思ってるの。休日だからって起きるの遅いんじゃない?」
「え、なになに。休日に遅く起きたからって母さんに何か迷惑かけてる?かけてないよね、だいたい僕が遅く起きることによって朝食を作る手間が一人分減って節約にもなるし寝ている間は家電製品を使わないから地球温暖化に少しは貢献できるんじゃないかな?」
と少しドヤ顔で言ってやった。
「お兄ちゃん!!」
「ん?どうしたひなね」
「キモちゅ悪〜い」
「。。。。」
少しきまづい空気になったので僕は妹を抱っこしてどかしてソファから起き上がり洗面台に顔を洗いにいった。
(はぁ、今日も僕の顔は本当にかっこいいな)
顔を洗い髪を水で流しドライヤーで乾かし身なりを整え服に着替えた。
今日は特に予定はない。都会とも田舎とも呼べないこの街を出歩いたって楽しんだり和んだりすることはない。
僕にはこれといって趣味はない。部活は高校に入って3ヶ月でやめた、僕には他者とうまくやっていく力があまりない。まぁ、いらないのだけれど。
でも、部活がないと夏休みはすごく暇だった。
リビングに戻ると妹がテレビの放送を見て踊っていた。
「あ、お兄ちゃん着替えたんだ」
「うん、ひなねは元気がいいね」
「お兄ちゃんが元気なさすぎるんだよ」
「あれ?母さんは?」
「あぁ、近所の人からなんか呼び出されて外に出かけにいったよ〜」
「そっか」
冷蔵庫をあけ、お茶をコップにつぎ一気飲みをした。
体の奥から感じるこの冷たく喉を通る感じがたまらなく良い。
「あ、そうそうお兄ちゃん」
「ん?」
「今日、服買いに行きたいんだけどついてきてくれない?」
「いいよ、んじゃあ2時に出よう」
「うん!」
2時までにはまだ30分もあった。
僕は庭に出て花の水やりをした。眩しい空を見上げると何やら黒い複数の物体がなんども衝突し合っていた。のちに僕を巻き込むことになるとはこの時は思いもしなかった。
余った水を庭に撒き散らし、僕は部屋で身支度をした。
「お兄ちゃん、準備できたよ〜」
「あぁ、僕もだ」
母さんへの置き手紙を机の上に置き僕と妹は出掛けた。
外は8月にしては少し寒く、太陽はそんなに強くなかった。
15分程度歩いて最寄りの駅の改札口を通り電車がくるまで少しだけ待った。暑そうにうちわで顔を扇いでるおじさんや下を向きスマホをいじっている女子高生がいた。
「間も無く電車が参ります。黄色の線までおさがりください」
アナウンスが聞こえた、通過電車だ。電車がトンネルの中から見えた。すると少し前にいた女子高生がスマホをポッケにしまい下を向き目をつぶり線路に飛び降りた!!
「お、おい早く上がってこい!!」
うちわで顔を扇いでいたおじさんが慌てて声をかけていた。
「ね、ねぇ!お兄ちゃん!!」
「ひなね、、、ちょっと待ってろ」
「え?」
ひなねは驚いた顔をしていた、それがひなねを見る最後の顔になった。僕は覚悟してホームに手を伸ばし、女子高生を救い出そうとした。
女子高生も手を伸ばした。しかし、僕の手を思いっきり引っ張り、僕をホームに無理やり降ろした。
「お、おい何するんだよ!!」
「一人で死ぬのは嫌なの。。」
そう女子高生は言い、僕を抱きしめ人生で初のキスをし、そして僕は死んだ。
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気がつくと僕は山に囲まれた真夜中の平原にいた。少し遠くに焚き火が見え、暗い夜の空に満月が光り輝ききれいだった。
電車に引かれたはずの僕の体はなんの傷もなかった。焚き火に向かって歩き僕は今、自分がいる世界が元の世界でないことがわかった。
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