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家に帰ると職場に傘を忘れてしまったのを思い出した。
今朝雨が降っていて出掛ける際に持って出たのだが、昼過ぎには雨は止み、傘の存在等これっぽちも思い出さなかった。
この間の給料で買った気に入りの傘だっただけに、他の誰かに持って帰られていないか心配になった。
けれどももう時間が時間だ。
職場に行った処で入る事も出来る訳が無く、とぼとぼと帰るしかないだろう。
仕方なしに明日まで待つ事になってしまった。
その夜は、傘が気になって余り眠れなかった。
翌日、職場に向かえば、傘は昨日置いた状態のまま傘立てに鎮座していた。
忘れないようにと傘立てから抜き取り、仕事場へと持って行った。同僚には「邪魔だ」と言われたが、お構いなしにデスクの横に置いたのだった。
それから仕事を終え自宅へ帰宅すると、傘の存在を思い出した。
また、傘を忘れてしまったのを思い出した。
今日はあそこまで忘れないようにと気を付けていたのに、何故忘れてしまったのかと自責の念に駆られてしまう。
明日こそは、明日こそは忘れないようにしようと、心に誓った。
そして翌日、仕事場で傘の存在を確認すると何時もの様に仕事へと没頭した。
自宅へ帰ると、また、傘を忘れた。
絶望しながら、どうやれば傘を持って帰れるのかと考えに考えたが、何も思いつかないのだった。
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