0人が本棚に入れています
本棚に追加
☆
家に帰ると、僕の部屋で俊は暇そうにしていた。まるで自分の部屋のように居座っている。
「おかえり。何だ、不機嫌そうだな。」
「お前、山本に佐倉の話しただろ。山本に免じて、怒らないでやるけど、口が軽すぎるよ。」
「ちょっとした昔話ぐらい大目に見て欲しいね。俺だって、話す相手は選んでいる。桜空ちゃんは良い子だね。大事にしてあげろよ。」
「分かってる。そういえば、お前の嘘もバレてたぞ。ノート見た時に、すぐにお前が頭良いって気づいたらしいぞ。学年二位だったって言ったら、流石に驚いていたが。」
「うん、やっぱりバレるよな。だって、学年一位と二位に囲まれての勉強って、やりにくいと思ったから。」
「お前のそういう所は、良い所だと思うよ。」
僕はそう言って、また勉強をしようとしたが、俊が不思議そうな顔をしているので、どうした?と聞いてみた。
「いや、朝飛が俺のことを褒めるのって珍しいなって。やっぱり、どうかしたか?帰ってきてから、微妙に元気がない気がするんだけど。」
「お前は、エスパーかよ。何か、少し自分が情けなかっただけだ。」
そう言って、帰り道での会話を話した。俊は、黙って僕の話を聞いていた。
「優しいのはどっちだって思ったんだ。僕は、佐倉も俊も傷つけたのに、そんな僕に山本は、君は優しすぎる。僕は悪くないって言うんだ。その言葉に救われて、僕よりずっと強い山本を羨ましく思ったんだ。」
「俺から見ればな、朝飛と桜空ちゃんは似たもの同士だよ。どっちも善人だ、優しすぎるくらいに。いいじゃないか、たまには甘えれば。昔のお前は、俺にも佐倉にも全然甘えなかった。全部一人で背負い込むんだ。たまには、守るだけではなく、守られてみろ。」
「分かったよ。ありがとな。」
「おう。なあ、聞きたかったんだけど、お前は桜空ちゃんのこと好きなの?」
「僕は、きっと大切な友達ぐらいにしか思っていない。」
だって、山本は他の奴を見ているんだ。僕のことを友達としか思っていないだろう。
「じゃあ、少しも嫉妬したりとかってないのか?」
「それは……、分からない。」
そう答えると、俊はにやりと笑った。僕はその表情が腹立たしくて、無視してやった。こいつにも、好きな人とかいるのだろうか?いつも人のことばかり気にしてる。それは一番、この男に当てはまる気がする。
最初のコメントを投稿しよう!