第1章 片想いに別れを

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私は、早速クラスで良さそうな人がいないか、探すことにした。害のなさそうな人って、いるかどうか分からないけど。クラスの男子を見ていると、やっぱり玲央はかっこ良いよなって思ってしまう。そんな事考えちゃいけないなと反省し、改めて少し見てみる。やっぱり、良さそうな人はいないかな……。 まずは、条件を整理するか。条件は、関わったことがある人が良いから、去年同じクラスだった人、玲央と正反対の人なら、冷静で落ち着いている人かな。そんな事を考えていると、机の端をとんとん、と叩く音が聞こえた。 「山本さん、ホームルーム終わって、あともうちょいで一限始まるけど、大丈夫?」 話しかけてきたのは、隣の席の長谷川朝飛くんだった。 「もうそんな時間かー。ありがとう、大丈夫。」 そう答えると、私は授業の準備を始めた。考え込みすぎて、時間を忘れるなんて……。 長谷川くんは、高一の頃クラスが同じで、図書委員で一緒になったことがあるくらい。印象としては、そんなによく喋るような印象もなく、落ち着いていて、悪い印象を受ける感じの人ではなかった。長谷川くんは、誠実そうだし、候補として悪くないかもしれない。 昼休み、向葵に今日は放課後予定あるか、と聞かれ、私は無いよと答え、放課後にファミレスに寄ってから帰ることになった。 放課後になると、私たちはファミレスに向かった。今日は、玲央は部活で来ないらしい。ファミレスに入ると、二人して抹茶のパフェを注文し、少し話していた。話は普通なもので、ドラマや映画の話をしていた。そんな話をしていると、バフェがきて、私たちはそれを食べ始めた。美味しいなーと思いながら食べていると、向葵の様子がいつもと違う気がした。 「向葵、どうかした?」 そう言うと、向葵は少し黙り込んで、口を開いた。 「今日は、桜空に話があるの。」 「何?」 「桜空って、最近元気ないように見えるんだけど……。それって、私と玲央が付き合っているから?」 不安げな顔で私を見る向葵を見て、図星だったけど、これは嘘をつくしかない。 「深刻そうな顔するから、どんな話かと思ったら、そんな話?私は玲央を友達としか思っていないし、私は好きな人いるよ。元気なさそうに見えたのは、好きな人のことで悩んでいるからだよ。だから、心配するな、向葵。私は二人のこと応援しているんだから。」 私がそう言うと、向葵はぱっと花が咲いたかのように笑顔になった。その顔を見て、私はこれで良かったんだって思った。 「ねえ、好きな人って誰?私の知ってる人?」 やっぱり、それ聞くよね…。何て答えよう?また嘘が重なるけど、この際仕方ないか。 「私の隣の席の長谷川くんだよ。去年同じクラスだったでしょ?」 「長谷川くんなんだー。桜空のタイプってああいう人だったんだ。物静かなタイプだよね。いつから好きなの?」 「いつからかは、分からないんだけど。久しぶりに会って、やっぱりこの人が良いかなって思ったんだ。朝も、私がぼーっとしてたの、気にしてくれたみたいだし。」 「そっかー、告白はしないの?私たち、もう高二だから、遊んでいられる時間も少なくなってくるし。」 「告白ねー、どうしようかな。いざとなったら、緊張しそう。」 「いっその事、明日にでも告白してみたら?善は急げ。命短し、恋せよ乙女っていうじゃない?」 私は思わず、大笑いしてしまった。たまに、向葵は面白い言葉のチョイスをしてくる。 「向葵って、たまに面白い表現使うよね。」 「えっ、そうかな?」 「そうだよ。私、明日頑張って告白してこようかな?」 「それが良いよ。応援しているから。」 その後は、他愛もない話をして、私たちは帰路についた。 ―ごめんね、向葵。私は嘘ばかりついてて。いつかこの日々を笑い話に出来る時が来るよね?― 私は心の中で、そんな事を思っていた。
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