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私は翌日、少し緊張しながら教室に入った。長谷川くんは、席に座って本を読んでいるようだった。集中している様だったから、話しかけるのはやめておいた。四限の授業後に話そう。そう思いながら、授業を受けると、集中できるわけがなく、ノートをひたすら取る作業になってしまった。そもそも、告白の言葉も考えないといけないし……。私、人生で告白したことないし。とりあえず、変な人に思われないようにしよう。
四限後、私は長谷川くんに話しかけた。
「長谷川くん、ちょっと良い?」
「良いけど、何?」
「今日って、放課後暇?」
「暇だけど……。」
「じゃあ、一緒に帰らない?話があるの。」
「別に良いよ。」
私はありがとう、とお礼を言って、向葵の方に向かった。向葵は不安そうな顔でこっちを見ていたから、OKだったよと小声で伝えると、向葵は嬉しそうに笑った。その顔を見て私は少し安心したけど、告白しないといけないことを考えると、好きではないとはいえ、緊張する。
あっという間に放課後となり、私は長谷川くんに話しかけ、一緒に玄関へ向かった。
道中、私たちは特段話さずに歩いていた。何を話せば良いか分からない。長谷川くんは、そんなに表情が変わらないから、ちょっと分かりにくいところがある。ローファーを履いて、校門に向かって歩いていると、向葵と玲央の姿が少し遠くに見えた。向葵は私に気が付いたみたいで手を振って、玲央も手を振ってきた。私も手を振り返して、仲の良さそうな二人を羨ましく思った。最近は、クラスが離れたのもあって、三人でいることは少ないから。
「山本さんたちって、仲良いよね。」
「うん、仲良いよ。あの二人は、付き合っているんだ。羨ましいよね、友達からカップルになるって。」
長谷川くんは、確かに、と呟いて、また黙り込んだ。やっぱり、あまり話さないタイプらしい。もうそろそろ、話を切り出すしかないか…。
「あのさ、長谷川くん。」
「何?」
「あのー、言いたかったことがありまして。」
「うん。」
「好きです。私と付き合ってください。」
長谷川くんは目を大きく開き、とても驚いた表情をしていた。その表情は、見たことない表情だった。やっぱり、あまり関わったことのない人に告白されるの嫌だったかな。
「えーと、何で僕?」
「長谷川くんは、私の印象だけど、落ち着いていて、しっかりしていそうな人だなって。私は、感情に流れやすいから、私とは反対な長谷川くんを羨ましいと思ったんだ。」
「そっか、ありがとう。僕はてっきり、山本さんは藤井のことが好きなんだと思ってたよ。」
その言葉は当たっていたから、私は一瞬黙ったけど、ないないと言ってごまかした。私って、そんなに分かりやすいのかな?
そんな事を考えていると、長谷川くんの手がすっと出てきた。
「僕で良ければ、よろしくお願いします。」
私はその手を握り返し、握手した。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
その後は、他愛のない話をして、駅まで一緒に帰っていった。
私はこうして、片想いに別れを告げ、新たなスタートを切った。
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