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一週間経って、私と長谷川くんは放課後に、近くの喫茶店に向かった。喫茶店名は、symphonyと書かれていた。中に入ると、静かなBGMが流れていて、ビジネスマンや高校生など、様々な人がいた。私たちは、窓際の席に案内された。私はフルーツティーを頼み、長谷川くんは珈琲を頼んだ。
「ここ、良いお店だね。初めて知った、こんな良い喫茶店あるの。」
「喜んでもらえて良かった。僕も来たかったし。」
少し経つと、フルーツティーと珈琲が運ばれてきた。フルーツティーは、色んな果物がゴロゴロ入ってて、とても美味しそうだった。
それからは、趣味の話になった。私は音楽を聴くことと映画鑑賞が趣味で、長谷川くんは読書と音楽を聴くことが趣味みたい。長谷川くんは、音楽は幅広く好きで、洋楽からロックバンドまで、色んな曲を聴くみたいだ。よく聴くアーティストの名前は、有名な人が多くて、私が好きなアーティストもいたから、どの曲が好きかっていうので、盛り上がった。
「長谷川くんって、思ったより喋る人なんだね。」
「無口だと思ってたの?まあ、割と仲の良い友達だと喋るかな。山本さんの方がよく喋るけどね。」
「喋りすぎっていうほどでは、無いよね?玲央にも向葵にも、好きなことの話になると、よく喋るって言われてるんだよね。」
「全然、僕も話してて楽しいし。そもそも、まだ山本さんみたいな可愛い人と付き合っているっていうことが、現実離れしてる様に思うことがあるよ。」
そう笑って言って、長谷川くんは珈琲を飲む。今、さらっと可愛いって言わなかった?
「今、可愛いって言った?」
「うん、言ったよ。」
長谷川くんは、不思議そうな顔で私を見ている。意外だけど、何も考えずに、さらっと褒められる人なんだな。私が褒められ慣れてないだけなのかな?とりあえず、話を変えよう。
「ねえ、長谷川くんって小説どんなの好きなの?私は恋愛小説とファンタジーが好き。」
「僕は、専ら推理小説だね。特に、警察系が好きだよ。非日常的で、論理的な文章で、人間性も描かれているところが好きだよ。いつか、面白い推理小説を書くのも僕の一つの夢なんだ。」
そう言って話す姿はとても楽しそうで、年相応な感じがした。思ったよりも、喋りやすい人だと思った。
私と長谷川くんは、その後少し話して、店を出た。紅茶は美味しかったし、色んな話が出来たから楽しかった。帰り道は映画の話をしていた。
「今日はありがとう。楽しかった。また今度行こうね。」
「うん。こちらこそ、ありがとう。人と寄り道するの久しぶりだったから、楽しかった。」
そう言うと、長谷川くんは去ろうとした。私は一つ気がかりで、長谷川くんを呼び止めた。
「あのさ、ずっと気になってたんだけど。さん付けで呼ばなくて良いよ。付き合っているんだし。」
「じゃあ、山本って呼べば良いかな?名前で呼ぶのまだ早い気がするし。」
「うん、それで良いよ。じゃあ、私は長谷川って呼ぶね。」
そう言うと、少しおかしく思えて、二人して笑った。
「じゃあねー、長谷川。」
「じゃあね、山本。また、明日。」
少し慣れなくて、また笑いながら、私たちはそれぞれの帰路についた。
☆
僕は電車に乗りながら、友人に1通のメールを送った。
「お前が薦めてきた喫茶店、山本すごく喜んでいたよ。ありがとう。」
そう送ると、すぐに返信が来た。
「良かったな!ほら、やっぱり俺の方が女心よく分かっているだろう。今度、俺にも会わせろよー。朝飛が誰かと付き合うなんて、数年ぶりだからな。」
僕は返信を何も送らなかった。会わせろねー、気が向いたらだ。
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