第2章 新しい日々

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俺と朝飛は、中学も同じで、中二の頃には同じクラスになったんだ。相変わらず、あいつと二人で行動することが多かった。俺にも朝飛にも、他に友人がいたけど、やっぱり二人で行動する方が楽だった。あいつは優しいから、何言っても許してくれるし、その時からそんな気のおけない仲だったんだ。 俺は当時サッカー部で、朝飛は文芸部だった。クラスには、朝飛と同じ文芸部の女子がいて、佐倉彩っていう子だったんだけど、中二の途中から、その子と朝飛と俺で話すことが増えたんだ。休み時間に軽く喋ることが増えた。佐倉は女子らしくて、可愛くて、少し大人しめな女子だった。俺は気が付いたら好きになっていたんだ。だけど、佐倉は朝飛が好きだったんだ。 佐倉が朝飛に告白して、二人は付き合うことになった。俺は親友として、二人の恋を応援しようと思って、身を引いた。時折佐倉とは話していたけど、二人で仲良さそうに話すことが増えていった。俺はその時少しだけ、親友も好きな人も失った様な感じが少ししていたよ。ガキだったからかな。 まあ、一ヶ月後にはそんな感情も薄れてきて、二人が幸せなら良いと思えるようになったんだ。そう思えるようになったら、楽になったよ。また、朝飛の家に行くことが増えて、今まで通りに戻ったんだ。だけど、その一ヶ月後から朝飛は不機嫌なことが増えていった。最初は佐倉と喧嘩でもしたのかなって思ったけど、それにしては不機嫌なのが直らないから、段々違和感を感じるようになったんだ。 俺は何度か、何かあったのかって聞いたんだけど、朝飛はちょっと疲れただけだの一点張りだった。そして、その一ヶ月後には、人づてから朝飛と佐倉が別れたことを知ったんだ。俺、朝飛と一番仲が良いと思っていたから、何で俺に何も話してくれなかったのか、全然分からなくて。その日、朝飛を問い詰めに家に行ったんだ。 「朝飛、お前佐倉と別れたって聞いたけど、何でだ?まだ、付き合って3ヶ月だろう。何で、俺に何も言わなかったんだよ。」 「僕が佐倉と別れようが、別れまいが、お前には関係ないだろう。」 俺は腹が立って、気が付いたら朝飛の胸倉を掴んでいた。 「関係あるだろう。お前ずっと不機嫌なのに、何も言わないし。何があったんだよ?」 「じゃあ、一つ聞く。お前、佐倉のこと好きだっただろう?過去形でもないのかもしれないが。」 俺は驚いたけど、正直に答えることにしたんだ。 「ああ、好きだったよ。でも、最近は二人がうまくいけば良いと思っていた。真逆 、俺に気を遣って別れたとか言わないよな?」 「そんなんじゃない。振ったのは僕だが、別れたのは別の理由だ。単純に、好きになれなかっただけなんだよ。」 「じゃあ、何で付き合ったんだよ。お前は気を持たせて、傷つけただけじゃないかよ。そんなの、お前らしくない。何でそんな最低なことが出来たんだ。」 そう言って、俺はあいつを初めて殴ったんだ。 「お前に、僕の何が分かるんだよ。」 聞いたこともない低い声で、朝飛はそう言って、俺はどうしようもない感情を抑えられなくなって、そのまま家を飛び出していったんだ。
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