第1章 片想いに別れを

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第1章 片想いに別れを

「私、長谷川くんのことが好きです。付き合ってください。」 私が君に言ったその言葉は、真っ赤な嘘でした。 1. 私は、気が付けば高校二年生になっていた。今は春休みが終わり、新しい一年が始まった。本来、新しい一年が始まると、気分が高揚するものだろうけど、私は少し憂鬱な気分で学校に向かった。その原因は、春休みのことである。 春休みに、私は失恋をした。誰に気付かれることもなく、自分の心の奥にしまったまま……。私には、一番仲の良い友人が二人いる。明るく、女子らしい神田向葵と優しく、運動神経抜群な藤井玲央が私の友達だ。私たちは三人で行動することが多くて、何回も一緒に寄り道したり、休日に遊んだりした。そんな内に、私は玲央のことが好きになっていった。でも告白する勇気はなくて、この関係が続いていけば良いと思った矢先、春休みに向葵が玲央に告白して、二人は付き合うことになった。メールでそれを知った時、私は一人で自分の部屋で泣いていた。泣いて気持ちが晴れるわけじゃないけど、涙はしばらく止まらなかった。春休みは会う機会がなくて、新学期に二人に会うことになった。玲央は別のクラスになって、私と向葵は今年も同じクラスになった。向葵は本当に幸せそうで、私はいつまでも暗い顔をしていられないと思った。 だけど、少し時間が経った今でも、二人が仲良さそうに喋っているのを見ると辛くなる。この憂鬱な気分をどうやって紛らわせたら良いのだろう。そんなことを思いながら、今日も授業を受けている。放課後になると、私は用事があるからと言って、一人でそそくさと帰っていった。向葵と玲央は、二人でいれた方が良いだろうという思いと、やっぱりなかなか忘れられない自分が情けないから……。 家に帰ると、宿題を済ませ、ふとテレビを見てみた。テレビでは、恋愛系の青春ドラマが流れていて、主人公が失恋し、友達に辛いと相談しているところだった。その姿を見て、気持ちがよく分かって、私は泣きそうになっていた。主人公の友達は、その子にこう言った。 「すぐに諦めたいのなら、新しい恋しかないでしょ。例えば、この人なら付き合っても良いかなーって思う人に告白してみるとか?」 主人公の女の子は、新しい恋をしようと前に進むことを決心して、ドラマは終わった。新しい恋かー……。それしかないかな、やっぱり。付き合っても良いかなって思う人が、果たして見つかるだろうか。もし誰かに告白して、付き合ったら、私は玲央のこと諦められるのかな? そんな事を考えていると、向葵からメールが来た。 「桜空、今日元気なかった気がするけど、大丈夫?私で良ければ、いつでも話聞くからね!」 私は、「ありがとう、大丈夫だよ。」と送った。 やっぱり、突飛な発想だけど、害のなさそうな人を見つけて、付き合ってみるしかない。私はそう決め、明日から良い人がいないか、探すことに決めた。
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