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(※この物語はフィクションです。実在の人物名とは一切関係ありません。また、作品中に登場する人物の年齢設定は、全て十八歳以上となっています。なお、予告なく登場人物名を変更する場合があります。)
俺は放課後の教室で一人でいる。親友の直輝を待っているのだ。すると、窓の外から掛け声が聞こえる。運動部の女子たちの声だ。ふとその声の方向を見ると、普段は、体育館で練習をしている女子バスケットボール部員たちが、グラウンドで練習をしているのが見えた。その中の一人、黒いショートカットの女子にどうしても目がいってしまう。
高校の三年間、偶然同じクラスで、生徒会長の若月くるみだ。優しい性格でひそかに心を寄せている者も多い。親友の直輝も去年、告白したが丁重に断られたそうだ。好意を寄せていない男子に、自分を偽ることができない彼女は、優しい性格なのだろう。
若月は緑色のバスケットボール部のユニフォーム姿で、抜群なスタイルの身体を前かがみにしている。俺は、のぞき見しているような罪悪を感じ、すぐに黒板に目を逸らした。
その時、教室に入って来る直輝が視界に入った。あいさつもせずに、グラウンドにいる女子バスケットボール部員たちを見始めた。
「おい小林、お前、若月を見ていたんだろう? ショートパンツ姿だしな。スタイルいいし、バストも……」
親友とはいえ、怒りが込み上げた。
「見てないわっ! 俺の前で若月の話をするなっ!」
「ごめん、ごめん、お前って、アイツのこと嫌っているもんな」
厳しい口調が反射的に出てしまった。直輝も戸惑ったのだろう。目をキョロキョロさせている。俺は、なんで怒鳴ってしまったのだろと、後悔していた。
「ごめんな、俺こそ言い過ぎたよ。じゃあ、行こうか?」
直輝と俺は高校の三年間、全く彼女ができなかった。俺は四月生まれだが、六月生まれの直輝は昨日、誕生日だったのだ。満十八歳になった記念として、高校から少し離れた市にある繁華街に、二人だけで遊びに行く約束をしていた。教室を出ながら直輝が言う。
「あの女って結構、裏表ありそうだな。バスケ部のある女子が言っていたんだけど、アイツ、大学生のカレがいるんだってよ」
口の軽い女子が若月の近くにいると、俺は思った。
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