〈2〉

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北川に、彼女が出来たって? 「え。ウソ。ハジメさん、からかってない?え。ホント?」 私、よっぽど変な顔をしていたに違いない。ハジメさんがしばらく私を見つめて、ふるふると肩を震わせた。 「ちょっ…どうして笑うんですか」 「んっ?ごめんごめん。 クールな表情なのに…口調はすげぇ焦ってて… そのギャップが…オモシロ…くくくっ」 口を片手で覆って、堪えるように笑うハジメさん。出逢った頃から変わらない、私が北川の話題に触れればいつもこうだ。 「もう…」 「はーごめんごめん。もう笑わない。 知らされて…なかったかぁ。 俺だって、ついこないだよ?」 ハジメさんが言うには… 【にーさんとホノカがバーベキューデート行くんなら、オレは彼女とツーリング行くっす】 サラッと聞かされたらしい。 オマエ、いつの間にそんな事になってんのって聞いたら、 【んー、ホノカの大会終わった後ぐらい?オレの仲間達がね、出逢わせてくれちゃったんすよねぇ。 同じバイク好きなんで、話が合っちゃって。あれよあれよという間に…そんな感じに】 …なんて事を話していたらしい。 「へぇ…北川にねぇ…ふぅん、そうなんだ…」 …なんで、私に話さないんだろう。 ハジメさんとお付き合いを始めて、ちょくちょくハジメさんのお店に通う私は、当然アルバイトの北川とも顔を合わす事がある。 報告出来るチャンスは何回もあったはず。どうして、その話が一度も出なかったんだろう。 北川とのメッセージに目を落とす。夏の終わりからがくんと減ったやりとり。北川のくだらないつぶやきは、今はもう送られてこない。 「…寂しい?」 「え」 不意にハジメさんに問われた。その意味を噛みしめる。 「寂しいとか…じゃないとは思うけど。 開口一番に知らせそうなものなのに、何で話さないのかなぁって。 だって、あの北川ですよ?全然…らしくない」 そう…らしくない。何でも言い合える仲だと思っていた。正確には、聞きもしないのに北川が何でもペラペラと喋るんだけど。 突然降って沸いた違和感。北川に対する何故?が止まらなくて、胸の奥でなんだか…気持ち悪かった。 …
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