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そんな気持ちのまましばらくダムの水面をぼんやり見つめていると、
「だよな、らしくないよなぁ。変に気を遣っちゃってさ」
「気を遣う?」
「そ。俺達に一線引いてんの。面白半分にジャマしたくないのかな。
キミらは…キミらのままでいてほしいのにな。
俺、ホノちゃんとキタガワなら全然妬かないし」
そう言いながら、人差し指の背中で私の頬を擦るハジメさん。その仕草にドキドキしながら、ハジメさんの手の甲に手を重ねた。
「…妬かない?」
「…いや、ちょっとウソ。今ホノちゃん、北川の事考えてるから、くそーって思ってる(笑)」
「…ふっ」
かわいい。こんなハジメさんを、北川は知っているのか。だから気を遣って、一線を引いているのか。
「ハジメさん…ずっと、知らせない気ですかね?」
「どうだろうなぁ…アイツ、ポロッと俺に言っちゃった感じだったし。改めて言う気も無いのかもな。
いつか…【きたいわ屋】に連れてくるような事があったら、ホノちゃんに一番に知らせるよ(笑)」
「(笑)ハイ。そうして下さい」
スマホのメッセージアプリをそっと閉じた。北川に何か送ろうかと思ったけど、やめた。彼女との時間を邪魔したくないと思った。
閉じる前に、いつかの北川が送った【幸せにしてもらえよ】というメッセージが目に入った。
北川?北川のおかげで、私幸せだよ。
北川も同じだといい。
これで北川の事を考えるのをやめた。
目の前の、とても大事な人の時間を、大切にする為に。
…
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