〈3〉

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「えぇと…キミは?」 当たり前だけど、知らない子。私の質問なんて聞こえてないみたい、上からベルト付きのロープを投げてきた。 「おねーさん、根性あるね?これ無しで登ろうなんてさ。 って、元に戻さなかった俺らがいけないんだけど。 付けた?そしたら、こっち側から登ってみて」 ベルトをしっかり腰に巻き付けた私は、男の子の誘導で再び崖を登り始めた。 さっきは途切れて探し出せなかった足場が、今度は分かりやすく頂上へと続いているのが見えた。面白いぐらいに楽々とトラバース出来た。 崖の淵に手をかけた時、男の子が手を差し伸べて私を引き上げてくれた。 「ふぅー。ありがとう、キミ」 そう言いかけた時、コースの先からまた別の男の子の声が聞こえた。 「トモー?何やってんだ、みんな先に行っちまったぞー」 「ばっかやろ、シゲルがロープそのままにしやがったから、後から来る人らにメーワクかかったっつーの!」 ごめんごめんと遠くのその子はペロッと舌を出して、向こうへ駆けていってしまった。 入れ替わるように、今度は崖の下にようやくハジメさんが辿り着いた。 「ホノちゃーん?えぇ、ここ登るの?」 「あっハジメさん。このロープ使って。あと、こっちから登り始めると楽ですよ」 ベルトを外してハジメさんの所に投げ下ろした。ひぃひぃ言いながら登ってくるハジメさんがかわいくて、クスクス笑いながら眺めた。 「あのおじさん、おねーさんのツレ?体力無さすぎー。ゴールまでまだ半分以上あるよ。ま、がんばって」 トモー!とまた向こうから呼ばれて、男の子はそんな事を私に言いながら走っていった。 「ふふ…5コしか違わないから」 「エ?何が5コ?」 ちょうどハジメさんもここまで上がってきた。 「ふぅー、やっと追いついたぁー。さっきの子供、ダレ?」 「お疲れさまです。さっきの子は…私もこの崖でつまずいてたんですけど、あの子が登り方を教えてくれて」 あの子と同じように、私もハジメさんに手を差し伸べてグイッと引き上げた。 「ふーん?どこかで見たカオのような…んーっ、気のせいかな。 で、何が5コ?」 「エ? …ふっ、次行きましょう、ハジメさん」 「エェ?なんなのー」 「へへへ」 引き上げて繋いだ手をそのままに、ハジメさんの一歩前を歩きだした。 5コ。 私とハジメさんの差。 それを埋めてくれるのは… この、繋がれた手。 「ちょ、っと、ホノちゃん、くすぐったいですけど(笑)」 「エ?あ、ごめんなさい(笑)」 考え事をすると無意識に繋いだ手をこねくりまわす私の癖、手を離そうとすると、ハジメさんの指が私の指の間に滑り込んできた。 「だめ。離すな」 付き合って初めての恋人繋ぎとハジメさんの低い声に、私の心臓がどうにかなってしまいそうだった。 …
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