〈4〉

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「わ…っと…」 私の右隣にいた男の人が、転がる指輪を追って手を伸ばす、でも届かなかった。 私が咄嗟に指輪を右手で覆って止めた。危うく排水口に入ってしまう所だった。 「あっ…ありがとう、キミ」 焦った顔で男の人が私を見た。 ハジメさんと同じか、少し年上に見える人。固そうな黒い短髪が印象的。 「あぶなかったですね…大事な物なのに、どうして外しちゃうんですか?」 「えっ」 彼は私の手のひらの指輪を摘まみながらビックリした。 「名前、彫ってあるから」 視力はいい私、手のひらに乗せた時に裏側の名前が見えた。のはほんの一部で、【Meiko to ーーー】だけ読めた。 「ウン。結婚指輪」 「わぁ、だったら尚更…」 「魚臭くなったらイヤだから…」 「あっなるほど…でも落とすなんて、奥さんに泣かれちゃいますよ。メイコさんっていうんですか?」 「はは、キミはどんだけ目がいいの(笑) ハイ、気を付けます。とにかく、ありがとうね」 彼がそう言い終わらない内に、 ガシャンッ 私の隣でまたも金属音、そして帰りを待っていた人の声。 「ホノちゃん… ドナタかな、ソチラは」 まな板や包丁、ボウルなどを少々乱暴に置いたハジメさん。目が全然笑ってないです。 「えーと… その迫力のある人は…キミの彼氏かな?」 指輪の彼は苦笑いをしながら私に聞いた。 …
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