〈4〉

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指輪の彼が釣ったマスのバケツが私達の前に差し出された。 中を覗くと1、2…7尾も。 「こりゃまた沢山釣りましたねぇ。 んじゃ、3人で頑張りましょう。 まずはぬめりを…塩でこすって取って…水で流して… 内蔵取るのは僕やるんで、ちょっと待って…」 難しい所はハジメさんに任せて、簡単な作業は私と指輪の彼とでたどたどしく行なった。 ハジメさんの流れるような手捌きにすっかり見とれて、 「すごいね、彼氏」 彼はこそっと私に言った。自分の事のように嬉しい。 「内蔵取ったやつにまた塩を擦り込んで…ヒレの所は多めに…そうすれば焦げ落ちないから、キレイに焼けるんだよ… …はい、最後に口から刺していくんだけど…こう…背骨を絡め取るようにクルクル…分かります?イメージはこう…なんだけど」 ハジメさんが2本の串を持って、1本を魚の背骨に見立てて、それにもう1本の串が巻き付く様を再現してくれる。 なるほど!と私も彼も理解して、いざ挑戦。 「こう…こう…できた!…できた?合ってます?(苦笑)」 「(笑)。上手い上手い。その調子であと1尾頼むね」 「ハイ」 「えっ?もう2尾しか残ってない!」 指輪の彼が素っ頓狂な声を上げた。私達の掴み捕りの分を合わせて10尾あったマス。私と彼が1尾にあくせくしている間に、ハジメさんは5尾をあっという間に仕上げていた。 「すごいなぁ。見た所、俺より若そうなのに…お店持ってるんでしょ?」 「はぁ、まぁ、親からの受け継ぎものですけどねぇ。 って、え、おにいさんいくつです?俺26ですけど」 最後の1尾ずつを3人で仕上げながら、そんな話をする。 「ホラやっぱり。俺もうすぐ30(笑)」 「まじですか。全然見えない」 「ははは。ねぇ二人とも、よかったらキミ達の分も俺達の所で焼かない?お世話になったから、うちの奥さんにも、みんなにも紹介したいな」 「えぇ?どうする?ホノちゃん(苦笑)」 「えぇ?どうしましょう?ハジメさん(苦笑)」 「いいからいいから。ついておいでー」 なんだか妙な展開で、仕上げたマス達を持って、半ば強引に私とハジメさんは指輪の彼についていく事になった。 …
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