〈5〉

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〈5〉

秋の日は釣瓶落とし。 オレンジに染まる空間は徐々に闇に支配されていって… その短い時間で、私は夢を見た。 亡くなったお父さんが、ニコニコして立っていた。 そばに行くと、お父さんは私に、何かを握っている手を差し出した。 私は手をお皿にしてそれを受け取った。 コーヒーキャンディだった。 パクッと口に放り込むと、キャンディがマシュマロに変わって、 ふわっと柔らかくコーヒーの香りが広がった。 お父さんがずっと微笑んでいるので、すごく幸せな気持ちになったーーー 「…ン…ゥン…」 目を閉じたまま呻くと、ぎしっと何かが軋んで、私の体が少し上下に揺らされた。 「…ちゃん…ホノちゃん…」 今度は頬に温かい感触。 重いまぶたをゆっくり上げると、ハジメさんがソファの下で膝立ちをして、私の頬を片手で覆っていた。 「…起きた?」 「…ア?アレッ…ハジメさん? …エッ?エッ?」 「落ち着いて(笑)」 「寝ちゃってました…!?」 「ウン(笑)」 ソファの上でキョロキョロと視線をさ迷わせる私に、ハジメさんは笑いながら手を取って、私の上半身を起こした。 窓の外はすっかり陽が落ちて、ログハウスの中は電灯で明るくなっていた。 「わあぁ、ごめんなさい…今何時ですか?」 「17:45。俺の方こそごめん。寝ないって言ったのに寝ちゃって…さっき起きたところ。 コーヒー出来た時に叩き起こしてくれたらよかったのに」 「ふふ…気持ち良さそうに寝てたから。すっきりしましたか?」 「ウン。ひと眠りしたら、腹へってきた(笑)」 「(笑)。じゃあ、いよいよ夜のバーベキューですね。準備始めましょう?」 キッチンへ向かおうと立ち上がると、ハジメさんに手首を掴まれて、またソファにしりもちをついた。 すぐ横にハジメさんも座ってきて、間が無いくらい近い。 「ハジメさん?」 「ごめん。 今日まだ …してないから」 私の膝の上で私の両手を押さえたまま、ハジメさんが顔を近づけ… ちゅっ… 唇が重なった。 …
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