〈5〉

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キッチンで材料を全て切って、外のかまどの火をおこした。 ひんやりとした夜の空気だったけれど、炎があたたかいから薄手の長袖の上着を羽織るだけで十分だった。 網と鉄板を設置して、ハジメさんが焼き始める。 「ホノちゃんは、何もするなよ?」 「ハイ。全部焼いてくれる約束ですもんね(笑) でも… そばにはいても、いいでしょう?」 「ハイ。いてください(笑) ほら焼けた。どんどん食っていこう」 網で焼いたお肉や野菜を私のお皿に乗せていくハジメさん。 もう片手で鉄板の焼きそばを炒めて、なんて器用なんだろうと思いながら眺めた。 自分が食べるだけじゃなくて、ハジメさんの分もお皿に取り分けた。 「わざわざいいのに。ホノちゃんが食べさせてくれれば」 「な。や、ナニ言ってんですか、甘えないで下さいっ」 「えぇ~っ」 恥ずかしい言葉についつっけんどんになる私に、おおげさに嘆きつつ笑いを堪えるハジメさん。 「ハイ、海鮮塩焼きそば。さて、次は… あれ、このソーセージ。ホノちゃん、何かした?」 竹串の刺さった極太のソーセージを目の高さまで掲げて、ハジメさんは言った。 「あ、気付きました? へへ、この前テレビでね、そう…螺旋に切り込み入れて焼いてたのを見て… 美味しそうだったから」 「ふーん? …お。おおお、おもしれー(笑)」 切り込みから肉汁が溢れて、肉が膨張して、竹串に巻き付いているかの様に焼けたソーセージ。 焼きの手を一旦休めて、ハジメさんはガーデンテーブルに並べられた料理達を、私と肩を並べて一緒に食べた。 焼けたばかりのソーセージを頬張って、はふはふと白い息を空へ飛ばす。 「ンーッ」 「ウマイ?」 「ハイ」 「ほんと…うまそうに食べるよなぁ(笑)」 「ン…ダメですか?」 「ダメじゃねぇ。そのままでいて」 「ふっ…いいんですか?こんな食い意地張ってて(笑)」 「いーよー。シメのラーメンも食べて貰わないと困る」 「エ?ラーメン?エ?ここで?」 いつの間に準備をしてたのか、網の上に二つ小鍋が乗っていた。 パックされた麺と味噌スープを開けて、クツクツと温める。 「一食分しか余らなかったから、これでカンベンな」 私の分とハジメさんの分、小さいどんぶりによそわれた味噌ラーメンを、ズルズルとすすった。 「はー。やっぱり、ハジメさんの味噌大好き」 「そう?」 一食分を半分だから、三口ほどで食べ終わった。 それを見計らったように、ハジメさんが私の耳に唇を寄せて、 「料理人冥利に尽きます」 囁いたと思ったら、そのまま耳にキスをされた。 「ちょっ…ハジメさん!」 咄嗟に刺激を受けた所を手で覆って、キョロキョロと辺りを見回した。 「…誰も見てないよ。 …多分」 いたずらっ子みたいにペロッと舌を出したハジメさんは、事も無げに食事の続きをした。 もう、食べれない。一瞬にして、胸いっぱいになった。 …
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