〈6〉

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〈6〉

「っ!…」 「うわ…」 突然の暗闇。 分かるのは、雷鳴。稲光。 そして…ハジメさんの体温と胸の音。 「ホノちゃん…」 片手を私の背中に回しながら、もう片手でテーブルの上にあるランタンを手繰り寄せた。 「ソファーまで行ける…?」 ランタンを灯して、私の顔を照らした。ハジメさんもよく見える。 ハイ、と言おうとして声が出なかった。代わりに頷くと、ハジメさんはにっこり笑って、ゆっくり私をソファーへ導いた。 身を沈めると、ピカッと青白く光って数秒後に空の割れる音が耳をつんざいた。 「近かったな、今の…」 ソファーのそばにある小さなローテーブルにランタンを置いたハジメさんは、見えないように私の頭を自分の胸にもたげさせて、聞こえないように耳を塞いでいる私の手を大きな手で覆った。 「ダメなんだ?光も?音も?」 ハジメさんの胸に擦り付けるように、頷く。 「大丈夫…すぐ終わるよ…こんなの…」 そう言って、更に私を引き寄せて、ギュッと閉じ込めた。 黒いラインの入ったグレーカラーのスウェットが肌に心地よくて、ハジメさんの匂いが鼻をくすぐった。 付き合って初めての抱擁のきっかけが、こんなでいいのかな。 ドキドキより安心が勝ってるって、どうなのかな。 ハジメさんの心音がまるで子守歌みたいに、私の額から脳へ伝っていっているのが分かる。 ウトウトと…しだした。 「…だいぶ…遠ざかったけど…」 ハジメさんが呟いて腕を緩めたので、ぼんやりとした意識がはっとなった。 そっと耳から手を外す。まだ少しゴロゴロ鳴っているけれど、光は視界に入ってこなくなっていたので、普通にしていられる。 「あ…の。とんだ醜態を…」 ハジメさんがじっと見つめてくるので、縮こまって俯こうとした。 でも、ハジメさんの両手が私の頬をそっと挟んで、それを制する。 「あ…」 「カワイイ。コワガリホノちゃん」 「なっ」 チガウ、 と開きかけた唇を、ハジメさんは柔らかく塞いだ。 声も息も、周りのどんな音も、一瞬にして奪っていったみたい… 10秒間…音の無い世界に放り込まれた。 …
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